結論:数を確認し、原因と臓器障害を同時に探す
好酸球増多を見つけたら、まず絶対好酸球数(AEC)を確認します。一般にAEC 500/µL超を好酸球増多、1500/µL以上を著明な好酸球増多(hypereosinophilia:HE)の目安とします。ただし、最新の分類では反復測定、組織所見、病態を含めて判断し、1回の数値だけで診断しません。
HESは単なる「AEC 1500以上」ではなく、好酸球増多に起因する臓器障害がある病態です。AECがそれほど高くなくても、心筋炎や神経障害などが疑われれば緊急評価が必要です。
最初にAECを計算する
AEC=白血球数×好酸球割合です。白血球5,000/µL、好酸球20%ならAECは1,000/µLです。割合が高くても白血球が少なければAECは低く、割合が正常域でも白血球増多があればAECが高いことがあります。
過去の血算、発症時期、変動、ステロイド投与前後を確認します。脱水、日内変動、薬剤で値が変わるため、臨床的に安定していれば再検も有用です。
緊急臓器障害を先に探す
- 胸痛、呼吸困難、失神:心筋障害、心内膜障害、肺病変、血栓塞栓
- 片麻痺、意識障害、末梢神経障害:中枢・末梢神経病変
- 低酸素、肺浸潤影:好酸球性肺疾患、血管炎など
- 腹痛、下痢、肝障害:消化管・肝胆道病変
- 皮疹、水疱、粘膜病変、発熱:重症薬疹を含む
疑わしければ、心電図、トロポニン、胸部画像、心エコーなどを症状に合わせて行い、血液内科や関連専門科へ早期相談します。
原因を6群で整理する
1. 薬剤・アレルギー
新規薬だけでなく、数週から数か月前に開始した抗菌薬、抗てんかん薬、NSAIDs、サプリを含めます。発熱、皮疹、リンパ節腫脹、肝腎障害があればDRESSなどを考えます。
2. 寄生虫・感染症
渡航歴だけでなく、出身地、生肉・淡水魚、土壌、動物、免疫抑制を確認します。Strongyloides感染リスクがある患者では、ステロイドで播種性病変を起こし得るため、投与前評価が重要です。
3. アレルギー・臓器限局疾患
喘息・鼻茸、好酸球性肺炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などを、症状と臓器所見から考えます。
4. 血液腫瘍・クローン性疾患
貧血、血小板異常、芽球、脾腫、著明なビタミンB12・トリプターゼ上昇などが手掛かりです。末梢血塗抹、骨髄、分子検査は血液内科と相談します。
5. 固形腫瘍・免疫異常
体重減少、リンパ節腫脹、説明できない炎症所見があれば、傍腫瘍性を含めて検索します。
6. 特発性・分類不能
十分な検索後にも原因不明のことがあります。経過観察中も新たな臓器障害や診断手掛かりを再評価します。
初期オーダーの考え方
全例一律の大量検査ではなく、病歴と診察で選びます。基本は血算・分画、末梢血塗抹、腎・肝機能、尿検査、炎症反応です。症状に応じ胸部画像、心筋マーカー、便・血清寄生虫検査、免疫学的検査を追加します。無症状でもAECが持続して高い、他血球異常や脾腫がある場合は専門科へ紹介します。
よくある落とし穴
- 好酸球割合だけで重症度を判断する
- AECが高いこと自体をHESと呼ぶ
- 原因検索に集中し、心臓・神経などの臓器障害を見逃す
- 薬剤歴を直近数日だけ確認する
- 寄生虫リスクを確認せずステロイドを開始する
- ステロイドで値が下がったことを診断根拠にする
適用範囲
本稿は成人の末梢血好酸球増多の初期評価です。閾値や検査順序は病態、免疫状態、地域の感染症リスクで変わります。臓器障害が疑われる場合は、確定診断を待たず専門科と治療を検討してください。