結論:周期との関係を記録し、PMS・PMDDと月経困難症を分けて考える
「生理のときにつらい」という訴えには、月経前に精神・身体症状が反復するPMS・PMDDと、月経開始前後の疼痛を中心とする月経困難症が混在します。まず症状の内容、出現時期、月経終了後に軽快するか、生活機能への影響を確認します。
PMS・PMDDは少なくとも2周期の前向き症状記録が診断に役立ちます。突然の激痛、発熱、妊娠可能性、大量出血、失神、進行する疼痛があれば、定期的な月経症状と決めつけず緊急疾患を評価します。
最初の問診
- 最終月経、周期、持続日数、規則性
- 症状が始まる日と、月経後に消える時期
- 痛み、出血量、血塊、鎮痛薬の使用量
- 抑うつ、不安、易怒性、集中困難、希死念慮
- 性交痛、排便痛、排尿痛、不妊、慢性骨盤痛
- 妊娠希望、避妊、授乳
- 片頭痛、血栓症、喫煙、高血圧、肝疾患、乳癌歴
- 服薬、家族歴、学校・仕事・家庭生活への影響
妊娠可能性があれば妊娠反応を確認します。大量出血や息切れがあればCBCと鉄評価、症状に応じて甲状腺機能などを検討します。
PMS・PMDDを見極める
PMSは黄体期に症状が出現し、月経開始後に軽快する周期性が重要です。PMDDでは、著しい気分変動、易怒性、抑うつ、不安などが生活機能を強く損ないます。
症状日誌には、毎日の気分、身体症状、睡眠、機能障害、月経日を記録します。問診時の記憶だけでは、持続性のうつ病・不安症が月経前に増悪しているのか、月経前に限局するのかを区別しにくいためです。
希死念慮、自傷の危険、重い抑うつがあれば、周期の確認を待たず安全確保と精神科相談を優先します。
月経困難症:一次性か二次性か
初経後早期に始まり、月経開始前後に最も強く、診察や画像で器質的疾患を示さないものは一次性月経困難症が考えやすくなります。
次の所見は子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、骨盤内感染など二次性原因を示唆します。
- 以前は軽かった痛みが増悪する
- 月経時以外にも痛い
- 性交痛、排便痛、不妊
- 不正出血、過多月経
- 初期治療に反応しない
- 骨盤診察や超音波で異常がある
若年者でも、NSAIDsとホルモン治療で改善しない月経痛では子宮内膜症を考えます。
初期治療
月経困難症
NSAIDsは、禁忌がなければ月経開始直前または痛みの出始めから規則的に使うと効果的です。胃腸障害、腎機能、喘息、抗凝固薬、重複服用を確認します。
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬やプロゲスチン製剤などのホルモン治療は、避妊希望、症状、禁忌、本人の希望に合わせて選びます。器質的疾患が疑われれば婦人科評価を並行します。
PMS・PMDD
疾患理解、睡眠、運動、ストレス対処を基盤にし、重症度に応じて認知行動療法、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ホルモン治療を検討します。SSRIは連日投与または黄体期投与が選択肢ですが、薬剤特性と患者の症状に合わせます。
ホルモン治療の前に確認すること
配合ホルモン剤は「世代」や製品名だけで選びません。血栓・心血管リスクと禁忌を確認します。特に次では、エストロゲンを含む方法が不適切になり得ます。
- 前兆のある片頭痛
- 静脈血栓塞栓症・血栓性素因
- 35歳以上での喫煙
- 重度またはコントロール不良の高血圧
- 一部の虚血性心疾患、脳血管疾患、肝疾患、乳癌
- 産後早期など血栓リスクが高い時期
CDCのMedical Eligibility Criteriaなどで、患者の病態と方法の組み合わせを確認します。妊娠希望や避妊目的の有無も共有意思決定に含めます。
再評価
治療開始後は、症状日誌、生活機能、副作用、服薬状況を確認します。十分に使用しても改善しない場合は、診断、用量・タイミング、服薬遵守を見直し、婦人科または精神科につなげます。
よくある落とし穴
- 月経関連症状をすべてPMSと呼ぶ
- 症状日誌なしにPMDDと断定する
- 妊娠、貧血、子宮内膜症、気分障害を評価しない
- 強い痛みを「体質」と説明して再評価しない
- ホルモン剤を製品名だけで選び、片頭痛・喫煙・血栓歴・血圧を確認しない
- 希死念慮を月経前だけの問題として扱う
適用範囲
思春期以降のPMS・PMDD、月経困難症の初期診療を想定した教育用の整理です。妊娠中・産後、重い精神症状、急性腹症、大量出血、悪性疾患が疑われる場合は、それぞれの緊急対応と専門診療を優先してください。