結論:蛋白尿は「量・尿沈渣・腎機能の速さ」で評価し、RPGNを疑ったら同日中に腎臓内科へつなぐ
尿試験紙の蛋白陽性は診断の入口です。再現性を確認し、ACRまたはPCRで定量し、尿沈渣とCrの時間変化を組み合わせます。
数日から数週で腎機能が悪化し、血尿・蛋白尿・糸球体性尿沈渣を伴うなら、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を疑います。RPGNは病名ではなく、緊急に原因診断と治療を要する症候群です。
最初の10分
- 過去のCr/eGFRと尿所見を探し、悪化速度を確認する
- 尿試験紙だけでなく尿沈渣を依頼する
- 尿蛋白/Cr比または尿Alb/Cr比で定量する
- 血圧、浮腫、尿量、体重、K、酸塩基を評価する
- 喀血、低酸素、急速なHb低下があれば肺胞出血を疑う
- 腎毒性薬、感染、全身症状を確認する
- RPGNが疑わしければ、その日のうちに腎臓内科へ相談する
高K血症、肺水腫、重度アシドーシス、尿毒症症状があれば、原因検索と並行して緊急腎代替療法の適応を評価します。
蛋白尿をどう定量するか
尿試験紙は主にアルブミンを検出し、尿の濃さやpHで偽陽性・偽陰性が起こります。可能なら早朝尿で再検し、次を使い分けます。
- ACR:糖尿病やCKDのアルブミン尿評価に適する
- PCR:総蛋白を捉え、糸球体疾患の蛋白量把握に使いやすい
- 24時間蓄尿:必要な場面はあるが、蓄尿誤差に注意する
発熱、運動、心不全、尿路感染、月経で一過性蛋白尿が起こります。一方、骨髄腫などの軽鎖蛋白は試験紙で捉えにくく、「試験紙陰性だから蛋白尿なし」とは限りません。
尿沈渣が診断速度を上げる
糸球体性血尿を示す変形赤血球、赤血球円柱、蛋白尿は、糸球体腎炎を強く示唆します。白血球や顆粒円柱も併せて解釈し、尿路感染による膿尿を除外します。
RPGNの判断にFeNaは中心的ではありません。糸球体腎炎でもFeNaが低いことがあり、低値を根拠に「腎前性」と決めつけると診断が遅れます。
RPGNを疑う病歴・身体所見
- 発熱、体重減少、倦怠感
- 紫斑、網状皮斑、皮膚潰瘍
- 副鼻腔炎、中耳炎、鼻出血
- 喀血、呼吸困難、肺浸潤影
- 関節痛、筋痛
- 末梢神経障害
- 新規の高血圧、浮腫、乏尿
- 新薬、感染、悪性腫瘍、自己免疫疾患
「肺胞出血+糸球体腎炎」は肺腎症候群です。喀血がなくても肺胞出血はあり得るため、低酸素、画像、Hb低下を重視します。
初期検査セット
| 目的 | 検査例 |
|---|---|
| 腎炎の確認 | Cr/eGFR推移、尿沈渣、PCR/ACR、腎エコー |
| 血管炎・抗GBM病 | MPO/PR3-ANCA、抗GBM抗体 |
| 免疫複合体性 | C3/C4、ANA、抗dsDNA抗体、クリオグロブリン |
| 感染関連 | 血液培養、HBV/HCV/HIV、感染巣検索、必要時心エコー |
| 単クローン性 | 血清/尿蛋白電気泳動、免疫固定、遊離軽鎖 |
検査は病歴に合わせて追加します。感染性心内膜炎、ブドウ球菌感染、肝炎関連腎炎を見落とすと、免疫抑制が有害になり得ます。
腎生検を急ぐ理由
ANCAや抗GBM抗体は有用ですが、陰性でもRPGNは否定できません。腎生検は、病型、活動性、慢性化、治療可能性を判断する中心です。出血リスクを評価しつつ、可能な限り早く計画します。
ANCA陽性で臨床像が典型的でも、腎生検を省略できるかは専門科が判断します。血清検査結果をすべて待って相談を遅らせないことが大切です。
ステロイドを先に入れるべきか
安定している患者では、培養・感染評価と腎生検の準備を行い、感染性腎炎を除外せず漫然とステロイドを開始しません。一方、生命を脅かす肺胞出血や急速な腎機能低下では、検査を同時並行しながら専門チームが緊急治療を始める場合があります。
薬剤、投与量、血漿交換の適応は病型と重症度で異なり、固定した「プレドニゾロン1 mg/kg」で一律に扱いません。
よくある失敗
- 尿試験紙だけで蛋白量を判断する
- 過去Crを確認せず、慢性腎臓病と決める
- FeNa低値で腎前性と断定する
- ANCA陰性で血管炎を除外する
- 感染性心内膜炎を調べずステロイドを開始する
- 血清検査が揃うまで腎臓内科への連絡を待つ
カルテ記載例
「2週間でCr 0.9→2.6 mg/dL。尿蛋白2+、血尿3+、PCR 1.8 g/gCr、変形赤血球と赤血球円柱あり。RPGNを疑う。肺症状・皮膚・耳鼻科・神経所見を再評価し、ANCA、抗GBM抗体、補体、ANA、感染・単クローン性蛋白検索を提出。培養採取と腎エコーを行い、同日中に腎臓内科へ腎生検と治療開始時期を相談する。」
Take-home message
- 蛋白尿はACR/PCRで定量し、必ず尿沈渣と組み合わせる
- RPGNは急速な腎機能低下と糸球体性尿所見で疑う
- FeNaやANCA単独で除外しない
- 感染性腎炎を忘れず、培養と感染巣評価を行う
- 血清検査の完了を待たず、腎臓内科と腎生検を急ぐ