結論:腹痛があれば膵炎評価、同時に二次性原因を止める

高度高トリグリセリド(TG)血症では、まず急性膵炎の有無を確認します。TGが500 mg/dLを超えると膵炎リスクへの配慮が必要となり、とくに1000 mg/dL以上ではリスクが高まります。ただし、数値と発症は一対一ではありません。

次に、糖尿病コントロール不良、飲酒、肥満、甲状腺機能低下、妊娠、腎・肝疾患、薬剤などの二次性原因を探します。遺伝素因に二次性因子が重なって急激に上昇することが多く、原因への介入が最も速く効く場合があります。

腹痛がある患者の初期対応

心窩部痛、背部放散痛、嘔吐があれば、バイタル、脱水、臓器障害を評価し、リパーゼなどを測定します。高度乳び血清では測定系が干渉され、膵酵素が予想より低く出ることがあるため、臨床像と画像を合わせます。

急性膵炎なら、絶食を長引かせるのではなく、適切な輸液、鎮痛、早期経腸栄養など通常の膵炎診療を行います。TG低下法は重症度、糖尿病性ケトアシドーシスの併存、施設体制で異なります。インスリン持続投与や血漿交換を全例に行うものではなく、専門科と個別に判断します。

二次性原因チェックリスト

  • 未診断またはコントロール不良の糖尿病
  • 多量飲酒、直近の暴飲暴食
  • 肥満、メタボリックシンドローム
  • 甲状腺機能低下症
  • 妊娠
  • ネフローゼ、慢性腎臓病、肝疾患
  • エストロゲン、ステロイド、レチノイド、非定型抗精神病薬、一部の免疫抑制薬など

空腹時採血か、直近の食事・飲酒、過去のTG、家族歴も確認します。二次性原因が見つかれば、血糖管理、禁酒、原因薬の見直しを安全に進めます。

家族性カイロミクロン血症を疑う所見

小児期・若年からの著明高TG、反復性膵炎、治療抵抗性、家族歴がある場合は遺伝性疾患を考えます。発疹性黄色腫、網膜脂血症、肝脾腫が手掛かりになることがあります。

一方、成人後に糖尿病や飲酒を契機に上昇した場合は、多因子性カイロミクロン血症が多いとされます。見た目だけで分類せず、脂質専門医へ相談します。

検査値を鵜呑みにしない

乳びは測定法によって、ナトリウム、血算、肝機能、膵酵素などに干渉します。間接イオン選択電極法で見かけ上の低ナトリウム血症(偽性低ナトリウム血症)を示すことがあります。血清浸透圧、血糖、測定法を確認し、真の低Na血症として急速補正しないよう注意します。

急性期後の治療

膵炎予防を優先する高度例では、きわめて低脂肪の食事、禁酒、単純糖質の制限、体重・血糖管理を行います。フィブラート系薬、選択的PPARαモジュレーター、ω3脂肪酸製剤などは、腎肝機能、併用薬、妊娠可能性を踏まえて選択します。動脈硬化リスクに対するLDL-C管理も別軸で評価します。

よくある落とし穴

  • TGの数字だけ見て腹痛と膵炎重症度を評価しない
  • 薬を追加するだけで飲酒・糖尿病・原因薬を見直さない
  • 乳びによる偽性低Na血症を真の低Na血症として治療する
  • リパーゼが低いことだけで膵炎を否定する
  • 家族歴がないため遺伝素因を否定する

適用範囲

本稿は成人の高度高TG血症の初期評価です。急性膵炎や妊娠、遺伝性疾患では管理が異なります。具体的な食事・薬物療法は専門医、栄養士、施設手順と調整してください。