病棟で「血圧が下がっています」と呼ばれたら、患者さんのもとへ向かいながら応援を手配し、脈・意識・皮膚の所見から臓器に血液が届いているかを見ます。

ABCD評価のC(Circulation、循環)では、血圧と普段からの変化を押さえ、灌流の低下が疑わしければ、循環を支えながら原因を探します。

成人の一般病棟で初期対応する研修医を想定しています。院内の迅速対応チーム(RRT)の要請基準や処置手順を確認し、患者さんの状態に合わせて指導医・専門チームと対応します。

電話を受けたら、患者さんの様子を聞いて応援を呼ぶ

夜間、腹部手術後の70代の患者さんについて、「さっきまで話せていたのに、血圧が78/48 mmHgに下がって、返事が遅くなっています」と連絡が来ました。以下は架空の症例です。

  • いまの様子。呼びかけに反応するか、普段どおりに呼吸しているか、橈骨動脈に脈が触れるかを聞きます。
  • 経過。直近と普段の血圧、心拍数、変化に気づいた時刻、直前の処置や投薬を、すぐ分かる範囲で聞きます。
  • 病棟での準備。患者さんのそばにいてもらい、心電図・SpO₂モニターの装着と血圧の再測定を依頼します。自分は速やかに向かい、意識の変化や循環不全が疑わしければ、院内の手順に沿ってRRTや指導医を同時に呼びます。

反応がなく、正常な呼吸がなければ院内救急コールを起動し、AED・除細動器を手配します。 医療者が呼吸と脈を確認して、10秒以内に確実な脈を確認できなければ、胸骨圧迫を開始します。

到着直後にABCDを一巡し、低灌流を見つける

呼びかけに返事があるか、気道は通っているか(A)、呼吸数・呼吸の深さや呼吸仕事量はどうか(B)を短時間で確認します。危険な所見があればその場でA(気道)やB(呼吸)に対応します。

続いてCでは、橈骨動脈の脈の速さ・強さ・規則性、血圧、皮膚の色と温度を確認します。普段との意識の違いもその場で拾います。

意識・皮膚・尿量から灌流を評価する

ショックを疑うときは、意識・皮膚・尿量に臓器への血流低下の手がかりを探します。

見るところ ベッドサイドでの確認
意識 返事が遅い、新たにぼんやりしている、落ち着きがないなど、普段との変化
皮膚 冷感、冷汗、蒼白、網状皮斑、毛細血管再充満時間(CRT)の延長
尿量 看護記録や尿量の実測から、時間当たりの推移と普段との違いを確認

CRTは指先を圧迫して色を白くし、離してから色が戻るまでの時間を見ます。室温や末梢の温度などの影響を受けるため、脈や他の灌流所見と組み合わせます。

血圧が保たれていても、脈が弱い、意識が変わったなどの所見が重なればショックを疑います。皮膚が温かい敗血症性ショックもあります。

患者さんの様子と血圧の表示が合わないとき

患者さんの状態と血圧の表示が合わなければ、カフのサイズ・位置、腕の高さ、体動を確認し、測り直します。不整脈があれば脈診や心電図も合わせます。

橈骨動脈の触れ方は循環の手がかりの一つです。血圧は実測値とその推移で確認します。明らかな低灌流があるときは、再測定と初期対応を並行して進めます。

モニターと静脈路を確保し、介入のたびに診直す

最初のABCD評価で危険を拾ったら、チームで役割を分けます。一人は必要な酸素投与と呼吸の評価、一人はモニターと頻回の血圧測定、一人は末梢静脈路と採血を担当します。酸素投与中はデバイスと投与量も記録します。血液検査や心電図は、処置と並行できるものから進めます。

輸液への反応をどう見るか

循環血液量の不足が疑われ、輸液が必要と判断した場合は、等張晶質液を使い、投与ごとに血圧・心拍数・意識・末梢灌流を再評価します。 呼吸数、SpO₂、肺の聴診所見も比べます。

呼吸苦や肺うっ血が出現・増悪したら輸液を中断し、指導医と方針を見直します。心不全などで輸液過剰の懸念がある場合は、初回から量と速度を調整します。

改善が乏しい、あるいは一時的なら、出血の持続、心機能低下、血流の閉塞、血管拡張を考え直します。追加輸液の適否をチームで判断し、必要に応じて昇圧薬、輸血、緊急処置や集中治療室(ICU)への移動を早めに相談します。

ショックの原因を考え、必要な処置につなげる

みんほす!本の1pagerで、流れを確認

血圧低下の連絡から、到着後のABCD評価と初期対応、身体所見から考えるショックの原因別対応までを示すフローチャート。別タブで拡大

図の時間は進行の目安です。

重症なら応援要請と必要な処置をその場で始めます。図の輸液速度や検査は、灌流、呼吸状態、疑う病態に合わせて選びます。特に心原性・閉塞性ショックや持続する出血では、原因を解除する処置の手配を急ぎます。

病態ごとの手がかりと初期対応

疑う病態 手がかり 初期対応で急ぐこと
循環血液量減少性ショック 手術・処置後、吐血・下血、腹部の変化、体液喪失 出血を疑えば、止血を担う診療科への連絡と輸血の準備を並行する。体液喪失なら晶質液を使い、反応をみる。
心原性ショック 胸痛、新たな不整脈、肺うっ血、頸静脈の怒張 12誘導心電図を早めに記録し、循環器チームへ連絡する。
閉塞性ショック 突然の呼吸困難、片側の呼吸音低下、胸痛、頸静脈の怒張 緊張性気胸、心タンポナーデ、重症肺塞栓症を考え、緊急処置ができるチームを呼ぶ。循環が不安定で緊張性気胸を強く疑う場合は、画像を待たず、院内手順に沿って緊急脱気につなぐ。
血液分布異常性ショック 感染が疑わしい経過、または薬剤などへの曝露直後の気道・呼吸・循環の異常 敗血症を疑えば抗菌薬と感染源への対応を急ぎ、低血圧が持続する場合は早期の昇圧薬投与を相談する。アナフィラキシーを疑えば、皮膚症状がなくても、直ちにアドレナリン筋注と応援要請を行う。

検査と搬送を手配する

血算、凝固、乳酸などは疑う病態と重症度に合わせて依頼します。急性出血では初回のヘモグロビンが保たれていることがあります。病歴・診察・経過を合わせて出血を評価します。

ベッドサイドエコーは心機能や心嚢液などを評価する補助です。頸静脈や下大静脈の所見は他の所見と組み合わせ、治療の準備を進めながら検査します。CTへの移動が必要な場合は、搬送中も監視と処置が続けられる体制を整えます。

症例の続き。応援に何を伝えるか

到着すると患者さんは声をかけると目を開けますが、返事が遅く、呼吸数は28回/分、心拍数は122回/分。手が冷たく、橈骨動脈の脈は弱く触れます。血圧を測り直しても低く、腹部の張りが目立ってきました。

術後出血を含めたショックを疑い、RRTと手術を担当した科に連絡します。モニター、静脈路、採血、輸血準備をチームで進めます。

応援には、患者・背景、いまの異常、実施した処置と反応、必要な支援を短く伝えます。

腹部手術後の患者さんです。血圧78/48 mmHg、心拍122回/分で、再測定でも低値です。普段より返事が遅く、末梢冷感と腹部膨満があり、術後出血を疑っています。心電図とSpO₂を監視し、静脈路確保と採血を進めています。至急、病棟で評価と止血・輸血の判断をお願いします。

次の血圧が上がっても、意識、脈、皮膚、呼吸をもう一度みます。介入の時刻、前後の所見、応援への連絡、次の再評価の予定まで共有して引き継ぎます。

この記事は医療者の学習用です。個別患者への対応では、患者の状態と院内手順に沿って、指導医・専門チームと判断してください。

ABCDの順番と全体像は、ABCD評価の使い方|研修医向け・重症患者の初期対応フローで確認できます。

みんほす!本で病棟急変の対応を学ぶ

『みんなで楽しくホスピタリストになろう! エビデンスと実臨床の架け橋』の表紙

『みんなで楽しくホスピタリストになろう! エビデンスと実臨床の架け橋』では、「血圧が下がってます!って呼ばれたら」の章で、病棟からの連絡に始まり、所見や検査を組み合わせてショックの原因を見分ける流れを解説しています。当直前や症例を振り返るときに、図とあわせて読んでみてください。

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