結論:急性関節炎では、尿酸値や自己抗体より先に「感染した関節ではないか」を評価する

関節痛を見たら、次の順で整理します。

  1. 痛みの発生源は関節内か、腱・滑液包・筋など関節外か
  2. 客観的な関節炎(腫脹、熱感、可動域制限)があるか
  3. 急性(おおむね6週以内)か慢性か
  4. 単関節、少関節、多関節か
  5. 分布と関節外所見は何か

ただし急性で赤く腫れた関節では、分類を楽しむ前に化膿性関節炎を除外します。発熱なし、CRP正常、結晶ありでも感染は否定できません。

最初の10分

  1. 敗血症、ショック、壊死性軟部組織感染を評価する
  2. 関節の腫脹・熱感・発赤、他動可動域痛、周囲皮膚を診る
  3. 人工関節、免疫抑制、菌血症、最近の手術・注射、性感染リスクを確認する
  4. 化膿性関節炎を疑えば整形外科へ連絡し、関節穿刺を急ぐ
  5. 安定していれば関節液・血液培養採取後に抗菌薬を開始する
  6. 敗血症なら検体採取のために抗菌薬を遅らせない

関節内か、関節外か

関節内病変は自動運動だけでなく他動運動でも痛み、可動域が全方向に制限されやすい所見です。腱鞘炎、腱付着部炎、滑液包炎では特定動作・局所圧痛が中心になります。股関節・肩関節は腫脹が見えにくいため、比較診察と超音波が役立ちます。

化膿性関節炎:穿刺が診断の中心

SANJOガイドラインは、疑ったら速やかな関節穿刺を推奨しています。関節液の優先順位は次のとおりです。

  1. Gram染色・培養など細菌同定
  2. 白血球数・分画
  3. 結晶

関節液白血球5万/μL超は感染を支持しますが確定ではなく、2.5万/μL未満でも否定できません。免疫抑制患者では反応が弱くなります。尿酸結晶やCPP結晶が見えても、感染が併存し得ます。

可能なら抗菌薬前に血液培養も採ります。画像は穿刺ガイド、貯留、膿瘍、骨髄炎の評価に使いますが、MRI待ちで穿刺を遅らせません。

急性単関節炎の主要鑑別

  • 化膿性関節炎
  • 痛風・CPPD
  • 外傷、出血、骨折
  • 反応性関節炎、淋菌性関節炎
  • 慢性炎症性関節炎の初発

血清尿酸値は発作中に正常のことがあり、診断・除外に使えません。高尿酸血症だけで痛風と決めず、可能なら結晶を確認します。

多関節炎のアプローチ

分布を言語化する

分布 考える疾患
対称性MCP/PIP・手関節 関節リウマチ、ウイルス性関節炎
DIP、爪病変、指趾炎 乾癬性関節炎、変形性関節症
非対称性下肢、付着部炎 脊椎関節炎、反応性関節炎
肩・股帯の痛みとこわばり PMR、高齢発症RA
手背足背の圧痕性浮腫 RS3PE、高齢発症RA、悪性腫瘍関連

皮疹は頭皮、臍、臀裂、爪まで見ます。眼炎、口腔・陰部潰瘍、下痢、尿道炎、発熱、心雑音、レイノー、筋力低下を探します。

自己抗体の落とし穴

RFと抗CCP抗体は診断を補助しますが、陽性だけでRAではなく、陰性でもRAを否定できません。2010 ACR/EULAR分類基準は、他疾患で説明できない滑膜炎を分類する道具で、一般患者のスクリーニング検査ではありません。

ANAを「関節痛セット」で無差別に測ると偽陽性が増えます。病歴・診察からSLEなどを疑う場合に、尿、血球、補体、疾患特異抗体と組み合わせます。

慢性炎症性関節炎は早期紹介する

6週を超える腫脹関節、朝のこわばり、MCP/PIP病変、骨びらん、抗CCP陽性などは早期RAを疑い、リウマチ専門医へつなぎます。DMARD開始を遅らせない一方、診断前の漫然としたステロイドは感染を隠し、評価を難しくします。

RA治療はTreat-to-Targetで、3か月以内の改善、6か月以内の目標達成を目安に専門医が調整します。メトトレキサートは第一選択になり得ますが、妊娠、腎肝機能、感染、肺疾患、ワクチン、葉酸を評価して処方します。

カルテ記載例

疼痛部位:関節内/関節外〔根拠〕
関節炎:腫脹、熱感、発赤、他動ROM痛
経過:急性≤6週/慢性、単/少/多関節
分布:対称性、MCP/PIP/DIP、下肢、付着部、体軸
感染リスク:人工関節、免疫抑制、菌血症、処置、性行動
関節外所見:皮疹・爪・眼・腸・尿路・心雑音
関節液:外観、細胞数、Gram、培養、結晶
化膿性関節炎の事前確率と整形外科相談時刻:

Take-home message

  • 急性で腫れた関節は、最初に化膿性関節炎を考える。
  • CRP正常、発熱なし、関節液細胞数低値、結晶ありでも感染を除外できない。
  • 関節痛を関節内外、炎症性、期間、数、分布で整理する。
  • RF・抗CCP・ANAは診察を置き換えない。
  • 持続する滑膜炎は、安易なステロイドより早期リウマチ紹介につなぐ。