結論:急に腫れた「手背の圧痕性浮腫」と対称性滑膜炎が診断の入口

RS3PEは、Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edemaの略です。高齢者に急性発症する対称性滑膜炎・腱鞘滑膜炎と、手背を中心とした圧痕性浮腫が特徴です。

特異的検査はなく、関節リウマチ(RA)、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、結晶誘発性関節炎、感染、心・腎・肝疾患などを除外して診断します。

最初の10分

  1. 発症が急性か、左右対称かを確認する
  2. 手背・足背の浮腫が圧痕性かを診る
  3. MCP・PIP・手関節、腱鞘、肩・膝・足関節を診察する
  4. 発熱、悪寒、単関節の強い発赤があれば感染性関節炎を優先する
  5. CBC、CRP/赤沈、腎肝機能、Alb、尿蛋白、TSHを確認する
  6. RF、抗CCP抗体を測るが、陰性だけでRS3PEと決めない
  7. 関節エコーで滑膜炎・腱鞘滑膜炎・皮下浮腫を評価する

RS3PEを支持する所見

  • 60歳以降に多い
  • 数日〜数週の急性発症
  • 左右対称の多関節痛・腫脹
  • 手背、ときに足背の著明な圧痕性浮腫
  • 腱鞘滑膜炎が目立つ
  • RF・抗CCP抗体陰性
  • X線で典型的な骨びらんを欠く
  • 少量〜中等量グルココルチコイドに速やかに反応することが多い

ステロイド反応性は支持所見ですが診断試験ではありません。治療前に感染症を除外します。

鑑別のポイント

疾患 区別の手掛かり
高齢発症RA 抗CCP陽性、持続する滑膜炎、骨びらん。ただし血清陰性RAもある
PMR 肩・股関節帯症状と朝のこわばりが中心。末梢浮腫を伴うこともある
CPPD 急性関節炎、軟骨石灰化、関節液CPP結晶
感染性関節炎 発熱、強い局所炎症、菌血症。疑えば関節穿刺
心・腎・肝疾患 全身性浮腫が中心で、滑膜炎・腱鞘炎を説明しにくい
薬剤性浮腫 Ca拮抗薬など。炎症反応・滑膜炎を説明しにくい
血栓症 片側優位の腫脹、疼痛。超音波で評価

悪性腫瘍をどう探すか

RS3PEは傍腫瘍症候群として生じることがありますが、古い小規模報告の高い合併率をそのまま全患者に当てはめません。2016年の331例を扱った系統的レビューでは悪性腫瘍関連は16.3%とされ、報告バイアスも考慮が必要です。

全例で行うのは、詳細な病歴・身体診察、血算・生化学、年齢相応のがん検診の確認です。次があれば検索を広げます。

  • 原因不明の体重減少、寝汗、持続発熱
  • 貧血、血球減少、異常なLDH
  • リンパ節腫脹、臓器腫大
  • ステロイドへの反応不良
  • 減量中の早期再燃
  • 非対称、非典型、著明な全身症状

漫然とPET/CTや上下部内視鏡を全例に行うのではなく、症状と標準的スクリーニングから個別化します。

治療とフォロー

感染症を除外し、RS3PEが妥当ならグルココルチコイドが中心です。開始量・減量速度は併存疾患と重症度に合わせ、膠原病科と決めます。糖尿病、骨粗鬆症、感染症リスクを同時に管理します。

通常は疼痛、浮腫、CRPが比較的速く改善します。反応が悪い場合は、診断の誤り、悪性腫瘍、血清陰性RA、感染症を再評価します。骨びらんや新しい症状が出れば診断名を固定せず見直します。

よくある失敗

  • 浮腫を心不全だけで説明し関節・腱鞘を診ない
  • RF陰性だけでRAを除外する
  • 関節穿刺が必要な感染性関節炎を見逃す
  • ステロイドが効いたのでRS3PE確定とする
  • 悪性腫瘍合併率を過大評価し全例に過剰検査を行う
  • 反応不良や再燃でも診断を見直さない

カルテ記載例

「2週間で急性発症した対称性多関節痛と両手背の圧痕性浮腫。関節エコーで腱鞘滑膜炎優位、RF・抗CCP陰性。感染性関節炎、CPPD、高齢発症RA、PMR、心腎肝疾患を評価した上でRS3PEを考える。体重減少と貧血の有無、年齢相応のがん検診を確認し、非典型所見があれば悪性腫瘍検索を拡大する。」

Take-home message

  • 高齢者の手背圧痕性浮腫+対称性滑膜炎でRS3PEを考える
  • 腱鞘滑膜炎は関節エコーで捉える
  • RF・抗CCP陰性だけで診断しない
  • 感染、RA、PMR、CPPD、全身性浮腫を除外する
  • 悪性腫瘍検索は年齢相応+赤旗所見で個別化する