結論:急に腫れた「手背の圧痕性浮腫」と対称性滑膜炎が診断の入口
RS3PEは、Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edemaの略です。高齢者に急性発症する対称性滑膜炎・腱鞘滑膜炎と、手背を中心とした圧痕性浮腫が特徴です。
特異的検査はなく、関節リウマチ(RA)、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、結晶誘発性関節炎、感染、心・腎・肝疾患などを除外して診断します。
最初の10分
- 発症が急性か、左右対称かを確認する
- 手背・足背の浮腫が圧痕性かを診る
- MCP・PIP・手関節、腱鞘、肩・膝・足関節を診察する
- 発熱、悪寒、単関節の強い発赤があれば感染性関節炎を優先する
- CBC、CRP/赤沈、腎肝機能、Alb、尿蛋白、TSHを確認する
- RF、抗CCP抗体を測るが、陰性だけでRS3PEと決めない
- 関節エコーで滑膜炎・腱鞘滑膜炎・皮下浮腫を評価する
RS3PEを支持する所見
- 60歳以降に多い
- 数日〜数週の急性発症
- 左右対称の多関節痛・腫脹
- 手背、ときに足背の著明な圧痕性浮腫
- 腱鞘滑膜炎が目立つ
- RF・抗CCP抗体陰性
- X線で典型的な骨びらんを欠く
- 少量〜中等量グルココルチコイドに速やかに反応することが多い
ステロイド反応性は支持所見ですが診断試験ではありません。治療前に感染症を除外します。
鑑別のポイント
| 疾患 | 区別の手掛かり |
|---|---|
| 高齢発症RA | 抗CCP陽性、持続する滑膜炎、骨びらん。ただし血清陰性RAもある |
| PMR | 肩・股関節帯症状と朝のこわばりが中心。末梢浮腫を伴うこともある |
| CPPD | 急性関節炎、軟骨石灰化、関節液CPP結晶 |
| 感染性関節炎 | 発熱、強い局所炎症、菌血症。疑えば関節穿刺 |
| 心・腎・肝疾患 | 全身性浮腫が中心で、滑膜炎・腱鞘炎を説明しにくい |
| 薬剤性浮腫 | Ca拮抗薬など。炎症反応・滑膜炎を説明しにくい |
| 血栓症 | 片側優位の腫脹、疼痛。超音波で評価 |
悪性腫瘍をどう探すか
RS3PEは傍腫瘍症候群として生じることがありますが、古い小規模報告の高い合併率をそのまま全患者に当てはめません。2016年の331例を扱った系統的レビューでは悪性腫瘍関連は16.3%とされ、報告バイアスも考慮が必要です。
全例で行うのは、詳細な病歴・身体診察、血算・生化学、年齢相応のがん検診の確認です。次があれば検索を広げます。
- 原因不明の体重減少、寝汗、持続発熱
- 貧血、血球減少、異常なLDH
- リンパ節腫脹、臓器腫大
- ステロイドへの反応不良
- 減量中の早期再燃
- 非対称、非典型、著明な全身症状
漫然とPET/CTや上下部内視鏡を全例に行うのではなく、症状と標準的スクリーニングから個別化します。
治療とフォロー
感染症を除外し、RS3PEが妥当ならグルココルチコイドが中心です。開始量・減量速度は併存疾患と重症度に合わせ、膠原病科と決めます。糖尿病、骨粗鬆症、感染症リスクを同時に管理します。
通常は疼痛、浮腫、CRPが比較的速く改善します。反応が悪い場合は、診断の誤り、悪性腫瘍、血清陰性RA、感染症を再評価します。骨びらんや新しい症状が出れば診断名を固定せず見直します。
よくある失敗
- 浮腫を心不全だけで説明し関節・腱鞘を診ない
- RF陰性だけでRAを除外する
- 関節穿刺が必要な感染性関節炎を見逃す
- ステロイドが効いたのでRS3PE確定とする
- 悪性腫瘍合併率を過大評価し全例に過剰検査を行う
- 反応不良や再燃でも診断を見直さない
カルテ記載例
「2週間で急性発症した対称性多関節痛と両手背の圧痕性浮腫。関節エコーで腱鞘滑膜炎優位、RF・抗CCP陰性。感染性関節炎、CPPD、高齢発症RA、PMR、心腎肝疾患を評価した上でRS3PEを考える。体重減少と貧血の有無、年齢相応のがん検診を確認し、非典型所見があれば悪性腫瘍検索を拡大する。」
Take-home message
- 高齢者の手背圧痕性浮腫+対称性滑膜炎でRS3PEを考える
- 腱鞘滑膜炎は関節エコーで捉える
- RF・抗CCP陰性だけで診断しない
- 感染、RA、PMR、CPPD、全身性浮腫を除外する
- 悪性腫瘍検索は年齢相応+赤旗所見で個別化する