結論:特徴的な臓器病変を見つけ、悪性腫瘍を除外できる組織を取りに行く

IgG4関連疾患(IgG4-RD)は、膵臓、胆管、唾液腺・涙腺、腎臓、肺、後腹膜、大血管周囲、眼窩、下垂体などに腫大・腫瘤・線維化を起こす全身性疾患です。

血清IgG4高値は診断の手掛かりですが、単独では診断できません。正常でも否定できず、高値でも悪性腫瘍、感染症、他の炎症性疾患で上がります。可能なら治療前に、病理と臓器分布で確かめます。

最初に考える3つの問い

  1. IgG4-RDらしい臓器病変があるか
  2. 癌、悪性リンパ腫、感染症、他の自己免疫疾患を除外できるか
  3. 尿路閉塞、胆道閉塞、大動脈病変など、不可逆的障害が迫っていないか

「IgG4が135 mg/dLを超えた」だけでステロイドを始めるのは危険です。

疑う臓器病変

臓器 手掛かり
膵・胆道 びまん性膵腫大、閉塞性黄疸、膵管・胆管狭窄
涙腺・唾液腺 両側性、持続性、無痛性の腫大
尿細管間質性腎炎、低補体、腎皮質の多発病変
後腹膜 大動脈周囲軟部影、尿管巻き込み、水腎症
肺・縦隔 結節、気管支血管束肥厚、胸膜病変、リンパ節腫大
眼窩 涙腺、外眼筋、眼窩下神経の腫大
神経・内分泌 肥厚性硬膜炎、下垂体炎
血管 大動脈周囲炎、動脈周囲炎、動脈瘤

患者は無症状のことがあります。1臓器で疑ったら、問診、診察、造影CTなどで多臓器病変を探します。

血清IgG4の読み方

2020年改訂包括診断基準では、血清IgG4 135 mg/dL超が血清学的項目に含まれます。しかし、この閾値は「診断確定値」ではありません。

  • IgG4-RDでも正常値のことがある
  • アレルギー、感染症、他の自己免疫疾患、悪性腫瘍でも高値になり得る
  • 軽度上昇より著明高値の方が特異性は上がるが、単独診断はしない
  • 治療中の値が病勢と一致しないことがある

総IgG、IgE、好酸球、補体、腎機能、肝胆道系酵素、尿所見も確認します。臓器障害と鑑別に合わせて検査を追加します。

病理が重要

典型的病理所見は次です。

  • 密なリンパ球・形質細胞浸潤
  • 花筵状線維化(storiform fibrosis)
  • 閉塞性静脈炎
  • IgG4陽性形質細胞増加とIgG4/IgG陽性細胞比上昇

IgG4陽性細胞は他疾患でも増えます。臓器ごとに細胞数基準が異なり、線維化の強い病変では細胞が少ない場合があります。病理医へIgG4-RDを疑う臓器分布と鑑別を伝えます。

生検部位は「最も取りやすい場所」ではなく、「診断力が高く、悪性腫瘍を除外でき、安全に取れる場所」を多職種で選びます。リンパ節だけでは特異的所見に乏しいことがあります。

必ず考えるmimicker

  • 膵癌、胆管癌、腎癌、肺癌
  • 悪性リンパ腫、Castleman病
  • Sjögren症候群
  • ANCA関連血管炎
  • サルコイドーシス
  • 原発性硬化性胆管炎
  • Erdheim–Chester病
  • 結核、真菌症など慢性感染症
  • 薬剤性・二次性後腹膜線維症

「ステロイドが効いた」はIgG4-RDの証明ではありません。リンパ腫や一部の炎症性疾患も一時的に縮小し、病理診断を困難にします。

治療を急ぐ臓器障害

無症状でも次は早く専門科へ相談します。

  • 水腎症、腎機能悪化を伴う後腹膜線維症
  • 閉塞性黄疸・胆管炎
  • 尿細管間質性腎炎
  • 大動脈炎、動脈瘤・解離リスク
  • 視神経・眼窩病変
  • 肥厚性硬膜炎、下垂体機能障害
  • 心膜病変

グルココルチコイドが寛解導入の中心ですが、臓器、再燃リスク、糖尿病、感染症、骨粗鬆症を考慮します。再燃・難治例ではリツキシマブなどを専門科で検討します。尿路や胆道の閉塞では、ステントやドレナージが先行することがあります。

よくある失敗

  • 高IgG4血症だけで診断する
  • 血清IgG4正常だけで除外する
  • 生検前にステロイドを始め、リンパ腫の診断を遅らせる
  • 1臓器しか検索しない
  • リンパ節生検のIgG4陽性細胞だけで確定する
  • IgG4値だけで治療反応や再燃を判断する
  • 無症状の水腎症や大動脈病変を経過観察だけにする

カルテ記載例

「大動脈〜腸骨動脈周囲軟部影と右水腎症を認めIgG4-RDを鑑別する。血清IgG4は参考所見であり単独診断しない。造影CTで全身の臓器分布を確認し、リンパ腫・悪性腫瘍・感染症・二次性後腹膜線維症を評価する。泌尿器科と尿路減圧を検討し、治療前に診断力の高い生検部位を膠原病科・病理部と相談する。」

Take-home message

  • IgG4-RDは臓器分布で疑う
  • 血清IgG4高値だけで診断しない
  • 可能なら治療前に病理で悪性腫瘍を除外する
  • 1臓器で疑ったら全身を検索する
  • 閉塞・腎障害・血管病変は無症状でも急ぐ