結論:視覚症状があれば眼科へ緊急連絡し、検査完了を待たずステロイド治療を始める

巨細胞性動脈炎(GCA)は50歳以上に発症する大血管炎で、不可逆的失明を来し得ます。新規頭痛、頭皮痛、顎跛行、複視・一過性黒内障・視力低下、炎症反応上昇で疑います。

疑いが高く、とくに視覚症状がある場合は、超音波や側頭動脈生検の予約を待って治療を遅らせません。

最初の10分

  1. 視力低下、複視、一過性黒内障、視野欠損の有無を聞く
  2. 新規頭痛、頭皮痛、顎跛行、舌跛行を聞く
  3. 側頭動脈の圧痛・硬結・拍動低下、左右上肢血圧差、血管雑音を診る
  4. PMR症状(肩・股関節帯の痛みと朝のこわばり)を確認する
  5. CBC、CRP、赤沈、肝腎機能、血糖を採る
  6. 視覚症状があれば眼科・膠原病科へ緊急連絡し、高用量ステロイドを開始する
  7. 診断検査と大血管病変評価を治療と並行して手配する

GCAを疑う症状

  • 50歳以上の新規または性状変化した頭痛
  • 咀嚼で顎が痛み休むと改善する顎跛行
  • 頭皮痛、髪をとかすと痛い
  • 一過性黒内障、複視、視力低下
  • 原因不明の発熱、体重減少、倦怠感
  • PMR症状
  • 四肢跛行、上肢血圧差、血管雑音
  • 原因不明のCRP・赤沈上昇、血小板増多、貧血

大血管型GCAでは、頭痛や側頭動脈所見が乏しく、不明熱、体重減少、腹痛、四肢跛行として現れることがあります。側頭動脈エコーが陰性でも大血管型を除外できません。

失明リスクを判断する

視覚症状は緊急です。一過性でも「今は見えるから大丈夫」と考えません。片眼の障害後に反対眼へ進行する可能性があります。

眼症状がなくても、顎・舌跛行、著明な炎症、血小板増多などは虚血合併症を警戒します。眼底診察と視機能評価を速やかに行います。

診断:画像と生検を施設の経験に合わせて組み合わせる

EULAR 2023は、疑わしいGCAの第一選択画像として側頭動脈・腋窩動脈超音波を推奨しています。halo signや圧迫で消えない壁肥厚を評価します。検査者依存性があるため、経験のある施設で迅速に行うことが重要です。

ACR/VF 2021は米国の実装状況を踏まえ、側頭動脈生検を重視しています。実臨床では次を組み合わせます。

  • 側頭・腋窩動脈超音波
  • 側頭動脈生検
  • 造影CT/MR angiography
  • FDG-PET/CT

治療開始後は画像・生検の感度が徐々に低下し得るため、できるだけ早く行います。ただし治療を遅らせる理由にはしません。

治療の考え方

眼症状や切迫する臓器虚血がある場合は、静注ステロイドパルスを含む緊急治療を検討します。眼症状がない活動性GCAでも高用量経口グルココルチコイドを開始します。具体的用量は体重、併存疾患、院内プロトコルに合わせ、専門科と決めます。

再燃とステロイド毒性を減らすため、トシリズマブ併用を検討する患者がいます。治療前には感染症リスク、ワクチン、骨粗鬆症、消化管・代謝合併症を評価します。

「CRPが正常化したら治癒」ではありません。症状、診察、炎症反応、必要に応じた画像を統合し、長期に大動脈瘤・解離などの構造的合併症も監視します。

鑑別

  • 感染性心内膜炎、脊椎感染、結核など感染症
  • 悪性腫瘍
  • ANCA関連血管炎、IgG4関連疾患、高安動脈炎
  • 非動脈炎性前部虚血性視神経症
  • 片頭痛、緊張型頭痛、顎関節症
  • 動脈硬化性大動脈疾患

ステロイド開始前に可能なら血液培養や感染評価を行いますが、視機能を脅かす場合は並行して進めます。

よくある失敗

  • 1990年ACR分類基準を診断の必須条件として使う
  • 頭痛がないので大血管型GCAを除外する
  • 視覚症状が一過性なので外来予約にする
  • 超音波・生検の結果を待って治療を遅らせる
  • CRP低下だけで再燃・大血管合併症を評価しない
  • ステロイド長期投与の感染・骨・血糖対策を忘れる

カルテ記載例

「70歳代、新規頭痛と顎跛行、一過性黒内障あり。CRP・血小板上昇を伴いGCAを強く疑う。不可逆的視機能障害のリスクがあるため眼科・膠原病科へ緊急相談し、診断検査を待たず治療開始。側頭・腋窩動脈超音波と側頭動脈生検を早期手配し、CTA/PETで大血管病変も評価する。」

Take-home message

  • 50歳以上の新規頭痛・顎跛行・視覚症状でGCAを考える
  • 一過性視覚症状も緊急
  • 治療を画像・生検の完了まで待たない
  • 頭蓋症状が乏しい大血管型GCAがある
  • 診断後はステロイド毒性と大動脈合併症まで追う