この記事の結論

副腎偶発腫瘍を見つけたら、悪性の可能性とホルモン自律分泌を別々に評価します。最初に過去画像を探し、非造影CTで均一性とCT値を確認します。均一で非造影CT値10 HU以下なら良性腺腫に合致し、2023年ESEガイドラインでは大きさにかかわらず追加画像は原則不要です。

ホルモン評価では、全身状態が許せば1 mgデキサメタゾン抑制試験を行います。褐色細胞腫の検査は非造影CT値10 HUを超えるなど画像が典型的良性腺腫でない場合に行い、高血圧または原因不明の低K血症があればアルドステロン/レニン比を評価します。

副腎生検は初期検査ではありません。褐色細胞腫を除外せずに生検・手術・侵襲的処置を行うと危険です。疑わしい病変は内分泌内科、放射線科、外科を含む多職種で検討します。

最初の10分で行うこと

  1. 「副腎腫瘤」が本当に副腎由来か画像レポートと画像で確認する
  2. 腫瘤径、左右、均一性、非造影CT値、境界、浸潤、転移所見を確認する
  3. 過去CT・MRIを探し、増大速度を比較する
  4. がん既往、体重減少、発熱、疼痛を確認する
  5. 高血圧、低K、糖尿病、骨折、筋力低下、発作性症状を確認する
  6. 薬剤と全身状態を確認し、必要なホルモン検査を選ぶ
  7. 不均一、高CT値、浸潤、急速増大なら内分泌・放射線・外科へ早く相談する

レッドフラッグ

  • 不均一、壊死・出血、辺縁不整、局所浸潤
  • 明らかな増大または大きな病変と悪性を疑う画像所見
  • 既知の悪性腫瘍、同時性転移を疑う所見
  • 発作性高血圧、頭痛、動悸、発汗、起立性低血圧
  • 重症または治療抵抗性高血圧、自然発症の低K血症
  • 感染、外傷、抗凝固中の急性側腹部痛と循環不全
  • 両側病変で副腎不全を疑う低血圧、低Na、高K

副腎クリーゼや褐色細胞腫クリーゼが疑われる場合は、外来精査ではなく救急・集中治療を優先します。

画像評価

非造影CTを起点にする

ESE 2023は、すべての副腎偶発腫瘍で副腎専用画像を推奨し、利用可能なら非造影CTを第一選択とします。

  • 均一かつ10 HU以下:脂質に富む良性腺腫に合致。追加画像は原則不要
  • 11〜20 HUで均一・4 cm未満:ホルモン過剰がなければ、追加画像で良性を確定するか、一定期間後の非造影CT/MRIを検討
  • 4 cm以上で不均一、または20 HU超:悪性リスクを多職種で検討
  • その他の組み合わせ:患者背景と画像特性に応じ個別化

造影CTのwashout、chemical shift MRI、FDG-PET/CTは、非造影CTだけで確定できない場合に放射線科と選びます。サイズだけで良悪性を断定しません。

ホルモン評価

コルチゾール自律分泌

全身状態が許す患者では、1 mg overnight dexamethasone suppression test(DST)を行います。翌朝血清コルチゾールが50 nmol/L(1.8 μg/dL)以下なら自律分泌は否定的です。これを超え、明らかなCushing徴候がなければmild autonomous cortisol secretion(MACS)を考えます。

結果は連続値として解釈し、デキサメタゾン吸収、CYP3A4誘導薬、エストロゲン、服薬遵守、急性疾患の影響を確認します。MACSではACTH非依存性を確認し、高血圧・糖尿病など関連合併症を評価します。

高齢・フレイルで検査結果が治療を変えない場合は、DSTを省略できることがあります。

褐色細胞腫

非造影CT値が10 HUを超えるなど、典型的良性腺腫ではない病変では、血漿遊離メタネフリンまたは尿中分画メタネフリンを測定します。採血姿勢、安静、ストレス、薬剤、腎機能による偽陽性を考慮します。

原発性アルドステロン症

高血圧または原因不明の低K血症があればアルドステロン/レニン比を評価します。Kを補正し、降圧薬の影響と採血条件を確認します。比だけで確定せず、専門医と確認検査・病型診断へ進みます。

アンドロゲン・前駆体

急速な多毛、男性化、女性化や副腎皮質癌を疑う画像では、性ステロイドとステロイド前駆体を追加します。

両側病変

両側でも各病変を同じ画像手順で評価し、コルチゾール自律分泌、褐色細胞腫、原発性アルドステロン症を適応に応じ調べます。転移、リンパ腫、感染、出血、先天性副腎過形成などを考え、副腎不全が疑われれば速やかに評価します。

フォローアップ

  • 典型的良性画像なら追加画像は原則不要
  • 初回ホルモン検査が正常なら、新たな内分泌徴候や高血圧・糖尿病の悪化がない限り、毎年同じホルモン検査を繰り返さない
  • 手術しない不確定病変では、6〜12か月後の非造影CTまたはMRIを検討
  • 明らかな増大や画像性状の変化は多職種で再評価

古い「すべて毎年画像・ホルモン検査」という運用を自動的に続けず、最新ガイドラインと個別リスクで決めます。

手術と生検

ホルモン産生腫瘍、悪性が疑われる病変、増大する不確定病変では副腎手術を検討します。MACSは一律手術ではなく、年齢、全身状態、コルチゾール分泌、関連合併症、本人の希望を多職種で検討します。

副腎生検は、画像だけで診断できず、結果が治療方針を変え、病変がホルモン非機能性であることを確認し、褐色細胞腫を確実に除外した場合に限って検討します。副腎皮質癌の良悪性判定目的に routine で行いません。

よくある落とし穴

  • 造影CTのレポートだけで非造影CT値を確認しない
  • サイズだけで手術・経過観察を決める
  • 典型的良性腺腫にも毎年CTを続ける
  • フレイルや薬剤影響を無視してDSTを解釈する
  • 正常Kだから原発性アルドステロン症を除外する
  • 褐色細胞腫を除外せず生検する
  • 既往画像を探さず新規病変と判断する

よくある質問

Q. 1 cm未満でも精査しますか?

一般に偶発腫瘍の定義は1 cm以上ですが、ホルモン過剰を疑う症状、悪性腫瘍の既往、特徴的画像があれば大きさだけで無視しません。

Q. 無症状ならホルモン検査は不要ですか?

いいえ。MACSや原発性アルドステロン症は典型症状が乏しいことがあります。画像と高血圧・K、全身状態に応じて検査します。

Q. 10 HU以下なら何もしなくてよいですか?

画像の追加フォローは原則不要ですが、初回のコルチゾール評価と、高血圧・低Kがあればアルドステロン評価は別に考えます。新たな内分泌徴候が出れば再評価します。

適用範囲

成人で偶然発見された1 cm以上の副腎腫瘤を主な対象とします。小児、妊娠、遺伝性腫瘍症候群、既知の副腎疾患、急性副腎出血、明らかな副腎癌・転移は専門的手順を優先してください。

まとめ

副腎偶発腫瘍では、過去画像と非造影CTを確認し、悪性リスクとホルモン過剰を分けて評価します。均一・10 HU以下は追加画像不要、正常ホルモンのroutine反復も不要です。生検前には必ず褐色細胞腫を除外しましょう。