ポリファーマシーは、単に服薬数が多いことではありません。服薬数の多さに関連して、薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態を指します。簡単にいえば、多剤服用により問題が生じている状態です。
何剤以上を「多い」とするかは研究によって異なりますが、5剤以上とする研究が多く、10剤以上をハイパーポリファーマシーとする研究もあります。
ポリファーマシーが生じる背景と問題
高齢になるにつれ、生活習慣病、運動器疾患、心疾患、呼吸器疾患などが増え、多疾患併存、つまりマルチモビディティの状態になります。それぞれの疾患のガイドラインに従って各専門家が処方すると、結果的に多剤服用となります。
多剤服用では、薬剤費や服薬の手間だけでなく、薬物相互作用、処方・調剤の誤り、飲み忘れ、飲み間違いが増え、病状が悪化することもあります。善意で行われた処方でも、結果として薬物有害事象を起こし得ることがポリファーマシーの問題です。
処方を見直す方法
処方の見直しには、具体的な薬剤名などを示した基準を用いる方法があります。
- 米国のBeers Criteria
- 欧州のSTOPP/START criteria
- 日本の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」
患者の処方を一剤ずつ評価する方法もあります。MAI(Medication Appropriateness Index)などを使い、それぞれの薬の適応、用法・用量、薬物相互作用、重複、治療期間、薬価などを確認します。
処方カスケードに注意する
薬剤を追加した影響で、さらに別の薬剤が追加される処方カスケードにも注意します。
たとえば、鎮痛薬としてNSAIDsを処方した後、副作用で血圧が上がり、降圧薬が追加される場合があります。また、高血圧治療を強化するためにサイアザイド系利尿薬を追加した後、尿酸値が上昇し、尿酸降下薬が開始される場合もあります。
新しい所見が現れたときには、処方薬の影響がないかという視点を持ちます。
医療機関、薬局、家族、各種サービスとの連携
患者が複数の医療機関を受診している場合、各医療機関が他院の処方を把握しないまま薬を処方したり、他院を受診していること自体を知らずに処方したりする可能性があります。
お薬手帳やマイナンバーカードの処方歴を確認し、何を服用しているか、処方が重複していないかを確認します。薬局との連携も重要です。
服薬アドヒアランスを確認する
処方された薬を実際に服用できているかという視点も必要です。高血圧や糖尿病の薬が処方されているのに病状が悪化している場合、病態の悪化を調べると同時に、服用できているかも確認します。その把握には家族や訪問看護師との連携が必要になることがあります。
服用できていなければ、薬を追加するのではなく、服薬アドヒアランスを高める方法を検討します。剤形、服薬のタイミング、お薬カレンダー、服薬の見守りなどが検討点です。ここでも家族、薬局、訪問サービスとの連携が重要です。
多剤服用そのものを否定しない
多剤服用を一律に否定するものではありません。心不全のGDMTや各疾患の急性期治療などでは、処方を減らしてアンダーユースになる方が問題です。
多剤服用の中に、薬物有害事象につながるポリファーマシーがあります。処方を調整する際には、それぞれの処方を行った医療機関や患者と協力して進めます。