結論:胆管炎は抗菌薬だけでなく、閉塞解除のタイミングを決める病気
急性胆管炎は、胆道閉塞に感染が加わり、敗血症へ急速に進む病態です。Charcot三徴(発熱、右上腹部痛、黄疸)がそろわない患者は少なくありません。特に高齢者・免疫抑制患者では、黄疸や腹痛が目立たないことがあります。
研修医が行うことは次の5つです。
- 敗血症としてABCDE・臓器障害を評価する
- 抗菌薬前に血液培養を採取する
- Tokyo Guidelines 2018(TG18)で診断と重症度を整理する
- 抗菌薬と支持療法を開始する
- 消化器内科へ早期連絡し、胆道ドレナージの時期を決める
最初の10分:敗血症対応を先に
- 血圧、意識、呼吸数、SpO2、尿量、末梢灌流
- 静脈路確保、必要な酸素、適切な晶質液
- 血液培養2セット、CBC、生化学、凝固、乳酸
- 腎機能・アレルギーを確認して抗菌薬準備
- 消化器内科、重症なら救急・集中治療へ連絡
低血圧が持続する、意識障害、呼吸不全、腎障害、血小板低下などがあれば、画像検査完了を待たず蘇生とドレナージ調整を進めます。
TG18診断基準を3群で覚える
A:全身性炎症
- 発熱・悪寒
- 炎症反応(白血球、CRPなど)
B:胆汁うっ滞
- 黄疸
- ALP、γGTP、AST、ALTなど肝胆道系検査異常
C:画像
- 胆管拡張
- 結石、狭窄、ステントなど原因を示す所見
Aに加えてBまたはCで疑い診断、A・B・Cすべてで確定診断と整理します。典型的三徴がなくても、炎症と画像所見から拾い上げられます。
ただし、胆管拡張だけでは胆管炎を確定できません。慢性拡張、術後変化、悪性閉塞などを臨床像と合わせます。
画像は超音波から、目的に応じて追加
腹部超音波は、胆管拡張、胆石、胆嚢所見を迅速に評価でき、造影剤も不要です。一方、遠位総胆管や小結石を見逃すことがあります。
造影CTは、閉塞原因、膿瘍、腫瘍、穿孔など代替診断・合併症の評価に有用です。MRCPやEUSは閉塞部位・結石の精査に役立ちますが、重症患者で治療的ERCPを遅らせるために行う検査ではありません。
重症度でドレナージ時期を決める
Grade III(重症)
循環、呼吸、腎、肝、神経、血液凝固のいずれかに臓器障害があります。呼吸・循環を安定化しながら、できるだけ早く胆道ドレナージを行います。
Grade II(中等症)
TG18では、白血球異常、高熱、高齢、著明な黄疸、低アルブミンなどのうち複数を満たす患者です。早期胆道ドレナージの適応です。
Grade I(軽症)
初期治療に反応する一部の患者は抗菌薬・支持療法で開始できますが、改善しない、閉塞が残る、再燃リスクが高い場合はドレナージを行います。
重症度は初診時だけでなく、治療反応を見て繰り返し評価します。
ドレナージは原則ERCP
内視鏡的経乳頭胆道ドレナージが第一選択です。患者の状態により、最初はステントまたは経鼻胆道ドレナージで感染源制御を優先し、結石除去を後日に分けることがあります。ERCPが困難・不成功なら、経皮経肝的またはEUSガイド下ドレナージなどを専門チームで検討します。
「抗菌薬が効くか24時間待ってから相談」ではなく、診断時点で消化器内科に連絡し、重症度と施設体制から時期を決めます。
抗菌薬の考え方
腸内細菌を中心に、重症度、医療関連、胆道手術・ステント、過去培養、地域耐性、アレルギー、腎肝機能を考慮します。抗菌薬前の血液培養に加え、ドレナージ時の胆汁培養も提出し、結果に応じ狭域化します。
薬剤と投与量は院内アンチバイオグラム・腎機能で変わるため、古い資料の固定処方をそのまま使いません。感染源制御後の治療期間も、菌血症、膿瘍、閉塞残存、臨床反応で個別化します。
胆管炎と胆嚢炎を混同しない
胆管炎は胆管の閉塞・感染であり、胆嚢炎は胆嚢の炎症です。Murphy徴候は胆嚢炎で使う所見で、陰性でも胆管炎を否定できません。両者が併存することもあります。
上級医への報告例
「発熱39.2℃、血圧88/54、意識変容があり、CRP高値と胆管拡張を認めます。黄疸は目立ちませんがTG18で胆管炎疑い、循環・神経の臓器障害がありGrade IIIを考えます。血液培養を採取して抗菌薬と蘇生を開始し、緊急ドレナージについて消化器内科へ連絡済みです」
よくある失敗
- Charcot三徴がそろうまで診断しない
- Murphy陰性で胆道感染を除外する
- CTで結石が見えないため胆管炎を否定する
- 抗菌薬の反応を待ってからドレナージを相談する
- 古い固定用量を腎機能・地域耐性なしに使う
- 初診時の軽症判定を更新しない
Take-home message
- 胆管炎は黄疸・腹痛がなくても起こる
- TG18のA炎症、B胆汁うっ滞、C画像で診断を整理する
- 抗菌薬・蘇生と同時に、閉塞解除の計画を立てる
- Grade IIIは安定化しつつ速やかに、Grade IIは早期ドレナージ
- 培養結果と感染源制御後の経過で抗菌薬を最適化する