結論:血の色より先に循環を見て、重症例ではCTAを急ぐ

下血・血便を見たら、最初に血行動態を評価し、必要な蘇生を始めます。鮮血便でも、出血が速い上部消化管出血のことがあります。血行動態不安定、黒色便、BUN上昇、潰瘍・肝疾患歴などがあれば上部出血を積極的に考えます。

持続する重症血便ではCTAが出血部位の同定と血管内治療への橋渡しに有用です。安定後の多くの患者では、十分な前処置を行った非緊急の大腸内視鏡が基本で、24時間以内の緊急内視鏡を一律に行っても主要転帰の改善は示されていません。

最初の10分で行うこと

  1. ABC、意識、血圧、心拍、呼吸、SpO2、末梢灌流を確認する
  2. モニター、太い静脈路、絶食、必要に応じ酸素・輸液を開始する
  3. 出血量・回数、黒色便、吐血、腹痛、失神を確認する
  4. CBC、血液型・交差、凝固、腎機能、肝機能を提出する
  5. 抗凝固薬、抗血小板薬、NSAIDs、最終内服時刻を確認する
  6. 直腸診で便性状、腫瘤、肛門病変を確認する
  7. 不安定または持続する大量出血なら、消化器・放射線・外科へ早期相談する

レッドフラッグ

  • 低血圧、頻脈、失神、意識変化、末梢冷感
  • 短時間に反復する大量血便、凝血塊
  • Hb低下または輸血需要の増加
  • 強い腹痛、腹膜刺激徴候、乳酸上昇
  • 抗凝固中、肝硬変、既知の大動脈疾患
  • 高齢者の突然の腹痛と血便

腹痛を伴う血便では虚血性腸炎だけでなく、急性腸間膜虚血、感染性腸炎、炎症性腸疾患、大動脈腸管瘻などを考えます。

出血源をどう考えるか

手掛かり 主な候補
鮮血が便表面、排便時痛 痔核、裂肛、直腸病変
無痛性の大量血便 憩室出血、血管異形成
腹痛の後に血便 虚血性腸炎、感染性腸炎、炎症性腸疾患
黒色便 上部消化管、小腸、右側結腸
鮮血便+血行動態不安定 大量上部出血も除外

色だけで部位を断定しません。鉄剤やビスマスで便が黒くなることもあり、直腸診で実物を確認します。

CTA・上部内視鏡・大腸内視鏡の選び方

CTAを優先する場面

血行動態的に重要な出血が持続し、血便が続く場合はCTAを検討します。造影剤腎障害への懸念だけで、救命に必要な出血源同定を遅らせません。陽性なら血管造影・塞栓術へ迅速につなぎます。

上部内視鏡を考える場面

鮮血便でも不安定、黒色便、吐血、上部消化管疾患歴、肝硬変などがあれば上部出血の評価を優先します。経鼻胃管の排液だけで上部出血を完全には否定できません。

大腸内視鏡を行う場面

蘇生後に安定した入院患者では、十分な前処置後の非緊急大腸内視鏡が基本です。未処置の緊急内視鏡は視野不良となりやすく、全員を24時間以内に検査しても再出血や死亡などの改善は示されていません。

輸血と抗血栓薬

輸血はHbだけでなく、持続出血、循環、心筋虚血、併存疾患を合わせて判断します。大量出血では検査値が初期に正常でも安心できません。

抗凝固薬の中和は、出血重症度、最終内服、腎機能、薬剤、血栓リスクで決めます。抗血栓薬を自己判断で一律中止・再開せず、処方目的を確認して専門科と相談します。二次予防のアスピリンは再開遅延による心血管リスクにも注意します。

よくある落とし穴

  • 鮮血便だから下部出血と決める
  • 初回Hbが保たれているため重症出血を除外する
  • 痔核が見つかっただけで近位病変を検討しない
  • 全員に緊急大腸内視鏡を依頼する
  • 持続大量出血でCTA・IVR相談が遅れる
  • 抗凝固薬名と最終内服時刻を確認しない

FAQ

便潜血検査は必要ですか?

肉眼的血便の急性期診断には不要です。便潜血検査は主に無症候者の大腸癌検診で使う検査です。

血便が止まれば帰宅できますか?

止血だけでは決めません。再出血リスク、Hb、併存疾患、抗血栓薬、原因疾患、再診可能性を評価します。

造影CTは全員に必要ですか?

いいえ。軽微で停止した出血に一律に行う検査ではなく、持続する重要出血の局在化で価値が高い検査です。

適用範囲と限界

成人の急性下血・血便の初期対応を想定した教育用記事です。大量輸血、中和薬、内視鏡止血、IVR、手術は院内プロトコルと専門科判断を優先してください。