結論:唾液を飲み込めない、ボタン電池、鋭利物は「朝まで待たない」

成人の異物誤飲では、多くの小さな鈍的異物は自然排出されます。一方、完全食道閉塞、食道内ボタン電池、食道内鋭利物は短時間で重大な損傷を起こし得ます。最初に気道と穿孔を評価し、異物の種類・位置・症状から内視鏡の緊急度を決めます。

ESGEガイドラインでは、完全食道閉塞、食道内の鋭利物または電池は可能なら2時間以内、遅くとも6時間以内の緊急内視鏡を推奨しています。その他の食道異物も原則24時間以内です。時間外でも消化器内視鏡医へ直ちに相談します。

最初の5分

  1. 気道、呼吸、循環を評価し、喘鳴・stridor・チアノーゼ・換気不良があれば気道異物として緊急対応する
  2. 唾液を飲み込めるか、流涎、頸胸部痛、嘔吐、吐血、呼吸困難を確認する
  3. 異物の種類、数、大きさ、鋭利性、磁石・電池か、誤飲時刻を確認する
  4. 最終飲食時刻、食道疾患・手術歴、義歯、抗凝固薬を確認する
  5. 穿孔・腹膜炎を示す発熱、皮下気腫、頸部腫脹、胸腹部の圧痛・筋性防御を診察する
  6. 消化器内視鏡、耳鼻咽喉、呼吸器、外科のどこへ緊急相談するかを位置と症状で決める

緊急度の目安

状況 対応の目安
気道閉塞 直ちに気道異物の救命対応。必要な専門科へ緊急連絡
完全食道閉塞(唾液も処理できない) 緊急内視鏡:可能なら2時間以内、遅くとも6時間以内
食道内ボタン電池・鋭利物 緊急内視鏡:可能なら2時間以内、遅くとも6時間以内
その他の食道異物・食塊 24時間以内の内視鏡。薬物治療で遅らせない
胃内の鋭利物、磁石、電池、長大・大型異物 原則24時間以内に内視鏡を検討
胃内の中型鈍的異物 症例により72時間以内の非緊急内視鏡を検討

これは成人の一般的な目安です。異物の材質、患者の解剖、症状、施設体制により前倒しします。穿孔や腹膜炎が疑われれば、内視鏡より外科的対応を優先する場合があります。

画像検査の選び方と限界

X線は金属、硬貨、電池などX線不透過性異物の位置・数・形を確認するのに有用です。頸部〜胸腹部を異物の想定位置に合わせて撮影し、電池と硬貨の鑑別、複数磁石の見落としに注意します。

魚骨、鶏骨、木、プラスチック、薄いアルミなどは単純X線で見えないことがあります。X線陰性でも、鋭い異物の誤飲が確実、局在する疼痛がある、穿孔を疑う場合はCTや内視鏡を相談します。バリウム造影は視野を妨げ、誤嚥リスクもあるため、内視鏡前にルーチンで行いません。

食塊嵌頓では背景疾患まで考える

食塊嵌頓は、食道癌、狭窄、Schatzki輪、好酸球性食道炎、運動障害などの初発症状になり得ます。除去できたら終わりではなく、粘膜評価や病理を含む原因検索を消化器科と計画します。

グルカゴンなどの薬物療法は有効性が一定せず、試すとしても内視鏡を遅らせてはいけません。肉を追加で飲み込む、炭酸飲料を大量摂取する、指を入れて吐かせるなどは危険です。

電池・磁石・鋭利物が危険な理由

  • ボタン電池:食道では短時間で電気化学的な組織傷害を起こす
  • 複数磁石、磁石+金属:腸管壁を挟み、圧迫壊死・瘻孔・穿孔を起こす
  • 鋭利物:食道・胃腸管の穿孔、出血、周囲臓器損傷を起こす
  • 長大・大型異物:幽門や十二指腸を通過しにくい

異物の製品名や同じ実物・包装があれば確認し、サイズを推定します。電池の型番や直径が分かる情報も重要ですが、情報収集のために除去を遅らせません。

特殊状況:薬物包み込み(body packing)

違法薬物を包装して飲み込んだ可能性がある場合、包装破損による致死的中毒が問題になります。無症候で包装が保たれている患者に内視鏡的回収を行うと破損させる危険があるため、通常は厳重観察と専門科・中毒診療への相談が基本です。中毒症状、閉塞、通過不良、破損疑いでは緊急外科対応を検討します。

よくある落とし穴

  • 「呼吸できる」だけで完全食道閉塞を除外する
  • 単純X線陰性で魚骨やプラスチック異物を否定する
  • グルカゴンなどの薬物治療で内視鏡を遅らせる
  • 電池を硬貨と見誤る、複数磁石を1個と判断する
  • 鋭利物を無理に吐かせる
  • 食塊を除去した後に食道の背景疾患を評価しない

カルテ記載例

「19時に魚骨を誤飲後、前頸部痛が持続。唾液嚥下は可能、呼吸困難・stridorなし。頸部圧痛あり、皮下気腫なし。単純X線で異物を確認できないが、X線透過性の鋭利物を否定できない。経口摂取を止め、消化器内視鏡・耳鼻咽喉科へ緊急相談。CTを含む局在評価と除去方法を決定する。」

Take-home message

  • 最初に気道閉塞、完全食道閉塞、穿孔を評価する
  • 食道内の電池・鋭利物、唾液も飲み込めない閉塞は緊急内視鏡
  • その他の食道異物も原則24時間以内に除去を検討する
  • X線で見えない異物があり、陰性だけでは除外できない
  • 薬物療法や追加摂取で内視鏡を遅らせない