結論:「ぐるぐるか、ふわふわか」より、いつ始まり、持続し、何で誘発されるかを聞く
めまいの表現は患者ごと、診察ごとに変わります。安全な入口はTiming(発症・持続・反復)とTrigger(明確な誘発)です。
| 症候群 | 特徴 | 代表疾患 |
|---|---|---|
| 誘発性反復性 | 頭位変換・起立などで短く反復 | BPPV、起立性低血圧 |
| 自発性反復性 | 明確な誘発なく発作を反復 | 前庭性片頭痛、Ménière病、TIA、不整脈 |
| 急性前庭症候群(AVS) | 急に発症し、持続するめまい・悪心・歩行障害 | 前庭神経炎、後方循環脳卒中 |
最重要の注意点は、HINTSを「めまい患者全員」に行わないことです。HINTSは、現在も持続するAVSで自発眼振があり、訓練を受けた診察者が行う場合に限って価値があります。
最初の10分
- ABCDE、血糖、SpO2、心電図、起立可能性を確認する
- 発症時刻、突然か、持続か反復か、誘発動作、現在も症状があるかを聞く
- 新規頭痛・頸部痛、複視、構音・嚥下障害、しびれ・脱力、聴力低下を尋ねる
- 眼球運動、脳神経、上下肢協調運動、感覚、立位・歩行を診る
- 症候群を分類してから、Dix-Hallpike、HINTS、画像の順を選ぶ
脳卒中を疑う赤旗
- 新しい局在神経症状、複視、構音・嚥下障害
- 支えなしで立てない、著明な体幹失調
- 新規の激しい頭痛・頸部痛
- 突然発症、反復する自発性発作、血管リスク
- 新規片側難聴
- 垂直性眼振、純回旋性眼振、注視方向で変わる眼振
- 低血圧、不整脈、胸痛、失神
NIHSSが低いことは後方循環脳卒中の除外になりません。
HINTSを使ってよい場面、いけない場面
適応
- 症状が数時間〜日単位で持続中
- 自発眼振がある
- 急性前庭症候群として前庭神経炎と脳卒中を鑑別したい
- 診察者がHead Impulse、眼振、Test of Skewの手技と解釈を訓練している
中枢性を示唆する所見
- Head impulseが正常
- 注視方向で眼振方向が変わる、垂直性など
- skew deviation
- HINTS-plusで新規片側聴力低下
不適切な場面
- 数秒の頭位誘発性発作
- 診察時には症状・眼振が消失
- 失神感、非特異的ふらつきだけ
- 自発眼振がない患者に、眼振のHINTSを機械的に当てる
HINTSの一部だけを「陰性」と記載しないでください。適応と3要素すべて、実施者の熟練が重要です。
誘発性めまい:BPPVを診る
後半規管型BPPVが疑わしければDix-Hallpikeを行います。典型的な潜時・疲労性を伴う一過性の回旋性上向性眼振なら、頸部・血管の禁忌を確認してEpley法を行います。
「頭を動かすと悪化する」は、持続性めまいでも普通にあります。頭位で悪化することと、頭位変換だけで短い発作が誘発されることを分けます。
起立で誘発されるなら、臥位・立位血圧、脱水、出血、薬剤、自律神経障害、不整脈を評価します。
自発性反復性めまい
症状が消えている時間帯はHINTSの出番ではありません。発作時間、頭痛・光過敏、耳鳴・難聴、動悸、神経症状を聴取します。TIAが疑わしければ血管画像を含め脳卒中経路で評価します。
画像検査の落とし穴
単純CTは出血や一部の別疾患には有用ですが、孤立性めまいの後方循環梗塞除外には弱い検査です。MRI-DWIも発症早期の小さな後方循環梗塞を見逃すことがあります。
したがって、赤旗がある患者で「CT正常だから帰宅」「早期MRI陰性だから末梢性」としません。診察所見と時間経過が画像より中枢性を示すなら、脳神経内科・脳卒中科と再画像や観察を相談します。
対症療法と帰宅判断
制吐薬・補液は必要に応じて使います。前庭抑制薬の長期連用は前庭代償を遅らせ得るため、短期間にします。帰宅前に歩行を再評価し、次を満たすか確認します。
- 症候群と最も考える診断が説明できる
- 危険な原因を合理的に下げられた
- 経口摂取・歩行が可能で、見守りと再受診手段がある
- 悪化時の具体的な再受診基準を本人・家族に伝えた
カルテ記載例
Timing:突然/徐々、持続○時間/反復○分
Trigger:頭位変換、起立、なし
随伴:頭痛・頸部痛、難聴、複視、構音/嚥下、脱力/しびれ
眼振:自発〔あり/なし、方向〕、注視、skew
歩行:独歩/介助/立位不能
症候群:誘発性反復性/自発性反復性/AVS
HINTS:適応〔あり/なし〕、実施結果(3要素)
画像の限界と再受診基準を説明
よくある質問
HINTSが末梢性ならMRIは不要ですか?
訓練された診察者が適切なAVS患者に行い、全所見が末梢性で他の赤旗がなければ画像を省ける場合があります。手技に不確実性がある、聴力低下・歩行不能・強い血管リスクがある場合は専門科と判断します。
CTで何もなければ脳卒中は否定できますか?
できません。後方循環梗塞に対する単純CTの感度は不十分です。
Take-home message
- めまいの質よりTimingとTriggerで症候群分類する。
- HINTSは持続するAVS+自発眼振+訓練された実施者に限定する。
- 歩行・体幹失調と新規聴力低下を必ず見る。
- 正常CT、早期MRI陰性だけで後方循環脳卒中を除外しない。
- 帰宅前に歩行と再受診基準を再確認する。