結論:高齢者の急性頸部痛+回旋制限+炎症反応上昇では、C1–C2を含むCTを確認する

Crowned dens syndrome(CDS)は、軸椎歯突起周囲に主にピロリン酸カルシウム(CPP)結晶が沈着し、急性炎症を起こす病態です。高齢者の急性頸部痛、発熱、CRP上昇、著しい頸部回旋制限で疑います。

ただしCDSは除外診断ではありません。髄膜炎、化膿性脊椎炎、硬膜外膿瘍、咽後膿瘍、骨折、動脈解離、巨細胞性動脈炎など、見逃せない疾患を先に評価します。

最初の10分

  1. ABCDE、意識、発熱、敗血症を評価する
  2. 外傷、突然発症、頭痛、視覚症状、嚥下痛、神経症状を聴く
  3. 頸部の自動・他動運動、とくに回旋制限を確認する
  4. 項部硬直だけで髄膜炎とCDSを区別しようとしない
  5. 四肢筋力・感覚、腱反射、膀胱直腸障害を診る
  6. CBC、CRP、腎機能を確認し、感染疑いなら血液培養を採る
  7. 高齢者の急性炎症性頸部痛では、歯突起周囲が評価できるCTを検討する

まず除外したい危険疾患

所見 優先して考える疾患
意識障害、強い頭痛、光過敏、紫斑 髄膜炎、くも膜下出血
神経脱落症状、膀胱直腸障害 脊髄圧迫、硬膜外膿瘍
菌血症、免疫不全、脊椎叩打痛 化膿性脊椎炎・椎間板炎
嚥下痛、流涎、咽頭膨隆 咽後膿瘍、石灰沈着性頸長筋炎
外傷、骨粗鬆症 頸椎骨折
新規頭痛、顎跛行、視覚症状 巨細胞性動脈炎
突然の片側頸部痛、神経症状 頸動脈・椎骨動脈解離

鎮痛薬が効いたから感染を除外できるわけではありません。前検査確率が高ければ髄液検査、造影MRI、造影CTなどを追加します。

CDSを支持する所見

  • 高齢者
  • 急性または亜急性の強い後頸部痛
  • 頸部回旋で増悪し、回旋が著しく制限される
  • 発熱、白血球増多、CRP・赤沈上昇
  • CTで歯突起周囲に線状・冠状の石灰化
  • 膝、手関節など他部位のCPPD歴
  • 抗炎症治療への比較的速い反応

2023 ACR/EULAR CPPD分類基準では、Crowned dens syndromeを特徴的な臨床像と歯突起周囲石灰化の組み合わせとして扱っています。分類基準は診断基準と同じではなく、臨床では感染や外傷を除外して総合判断します。

画像はCTが中心

単純X線では歯突起周囲の石灰化を見逃しやすく、MRIは感染・腫瘍・脊髄病変の評価には有用でも、結晶沈着の描出はCTに劣ります。頭部CTだけではC1–C2が十分入らないことがあります。

放射線科には「Crowned dens syndromeを疑い、歯突起周囲のCPPDを評価したい」と目的を伝えます。石灰化は無症候でも存在し得るため、CT所見だけで診断せず症状と一致させます。

治療

感染や骨折などが否定的なら、急性CPP結晶関節炎に準じて治療します。

  • NSAIDs:腎機能、消化管出血、心不全、抗凝固薬を確認
  • コルヒチン:腎・肝機能、相互作用、発症からの時間を確認
  • 短期全身ステロイド:NSAIDsやコルヒチンが不適切な場合に検討
  • アセトアミノフェン:補助的鎮痛

高齢者では「標準量」を機械的に用いません。腎機能と併用薬を見て最小限から開始し、数日以内の疼痛・可動域・CRPの変化を再評価します。改善しない場合は診断を見直します。

背景疾患をどこまで調べるか

若年発症、反復発作、家族歴、広範な軟骨石灰化があれば、ヘモクロマトーシス、副甲状腺機能亢進症、低Mg血症などを検討します。典型的な高齢者の単発例で、すべてを一律に検索する必要はありません。

よくある失敗

  • 「高齢者の寝違え」として画像を撮らない
  • 頭部CTだけで歯突起周囲を十分評価したと思う
  • 石灰化を見て髄膜炎や脊椎感染の評価を打ち切る
  • 腎障害のある高齢者へ高用量NSAIDsを漫然と処方する
  • 48〜72時間で改善しないのにCDSの診断を固定する

カルテ記載例

「高齢者の急性後頸部痛。頸部回旋で増悪し回旋制限が著明、CRP上昇あり。神経脱落症状、嚥下障害、外傷歴なし。髄膜炎・化膿性脊椎炎・骨折を鑑別し、C1–C2を含むCTで歯突起周囲石灰化を確認する。感染所見を再評価したうえでCPPDに準じた抗炎症治療を行い、48〜72時間で再評価する。」

Take-home message

  • 高齢者の急性頸部痛と回旋制限でCDSを考える
  • 歯突起周囲の評価にはCTが中心
  • CT石灰化だけで診断せず、危険疾患を除外する
  • 治療はCPPDに準じ、腎・消化管・心血管リスクで個別化する
  • 反応不良なら感染・腫瘍・血管病変を再評価する