結論:高Ca血症は「本当に高いか」「今すぐ下げるか」「PTH依存か」の3段階で考える
高カルシウム血症を見つけたら、数字だけを見て治療を始めるのではなく、次の順に整理します。
- 再検とイオン化Caで、真の高Ca血症か確認する
- 意識障害、脱水、腎障害、不整脈などから緊急度を決める
- 原因検索の最初にintact PTHを測る
- 症候性または高度なら、循環血液量を評価しながら補液を始める
- 重症例では、速効性のカルシトニンと持続性の骨吸収抑制薬を組み合わせる
総Caの値と症状は必ずしも一致しません。上昇の速さ、基礎疾患、腎機能、心機能まで含めて判断します。
最初の10分
- ABCDE、バイタル、意識、12誘導心電図を確認する
- 嘔気、便秘、口渇、多尿、筋力低下、せん妄、けいれんを聞く
- 脱水と体液過剰の両方を診る
- Caを再検し、アルブミン、Cr/eGFR、P、Mg、血液ガスを確認する
- 可能ならイオン化Caを測る
- intact PTHを治療前に提出する
- 薬剤・サプリメントを確認する:Ca、ビタミンD、チアジド、リチウムなど
高度高Ca血症、意識障害、進行する腎障害、循環不全、不整脈があれば、内分泌・腎臓・集中治療へ早期に相談します。
まず「真の高Ca血症」かを確認する
総Caはアルブミン、pH、脱水、異常蛋白の影響を受けます。補正式は目安にはなりますが、腎機能障害、重症患者、酸塩基異常、骨髄腫などでは誤差が大きくなります。
治療判断に迷うときは、イオン化Caを優先します。採血後の放置や空気混入でも値が動くため、施設の採取・搬送手順に従います。
緊急治療を始める目安
一律の数値だけで決めませんが、次があれば緊急性が高い状態です。
- せん妄、傾眠、けいれん、昏睡
- 強い嘔気・嘔吐、脱水、乏尿、急性腎障害
- QT短縮を含む心電図変化や不整脈
- 急速なCa上昇
- 高度高Ca血症、特に総Caが概ね14 mg/dL以上
軽度で無症候なら、原因薬の中止、再検、外来または入院での原因精査を計画できます。ただし悪性腫瘍関連は進行が速いことがあり、見かけの軽症に安心しません。
治療の組み立て
1.生理食塩水:固定速度ではなく体液量で調整する
多くの症候性高Ca血症は脱水を伴います。等張晶質液を開始し、血圧、尿量、呼吸状態、体重、Na、Crを再評価しながら調整します。心不全や腎不全では少量から始め、うっ血を繰り返し確認します。
ループ利尿薬はCaを下げるための routine ではありません。十分な補液後に体液過剰となった場合に限り検討します。
2.カルシトニン:早く効くが、長くは効かない
カルシトニンは数時間で作用しますが、反応は小さく、数日で耐性が生じます。重症例の橋渡しとして使い、単剤で治療を完結させません。用量は製剤と院内プロトコルを確認します。
3.骨吸収抑制薬:原因と腎機能で選ぶ
悪性腫瘍関連では、静注ビスホスホネートまたはデノスマブが再上昇を抑える中心です。効果発現まで時間がかかるため、重症例では補液・カルシトニンと並行します。腎機能、低Ca血症、歯科処置、既往治療を確認し、薬剤選択を専門科と相談します。
活性型ビタミンD過剰が機序なら、グルココルチコイドが選択肢です。原発性副甲状腺機能亢進症では、急性期を越えた後に手術適応を評価します。
4.透析:補液できない重症例で考える
心不全・腎不全で十分に補液できない、重篤な神経症状や不整脈がある、薬物治療に反応しない場合は、Ca濃度だけを待たず腎臓内科へ透析を相談します。
原因検索はPTHで二分する
| intact PTH | 主な原因 | 次に考える検査 |
|---|---|---|
| 高値または不適切に正常 | 原発性/三次性副甲状腺機能亢進症、リチウム、家族性低Ca尿性高Ca血症 | 尿中Ca、家族歴、頸部評価、薬歴 |
| 抑制 | 悪性腫瘍、PTHrP、ビタミンD関連、骨髄腫、甲状腺・副腎疾患、薬剤、長期不動 | PTHrP、25-OH-D、1,25-(OH)2-D、蛋白電気泳動、画像など |
尿中Caはチアジド、慢性腎臓病、Ca摂取量の影響を受けます。単独の比率で家族性低Ca尿性高Ca血症を断定しません。
よくある失敗
- アルブミン補正Caだけで重症度を決める
- intact PTHを測らず、腫瘍検索を無差別に始める
- 心不全患者にも同じ速度で補液する
- ループ利尿薬を最初から投与する
- カルシトニンだけで数日様子を見る
- Caが下がった時点で原因検索を止める
カルテ記載例
「総Ca 13.2 mg/dL、Alb 2.4 g/dL。補正式の誤差を考えイオン化Caを追加。口渇・多尿と脱水あり、意識清明、うっ血所見なし。心電図、腎機能、P/Mg、intact PTHを提出し、等張晶質液を開始。2時間後に呼吸状態、尿量、Caを再評価する。重症化時はカルシトニンと骨吸収抑制薬を専門科と相談する。」
Take-home message
- 補正Caは入口であり、迷うならイオン化Caを測る
- 緊急度はCa値だけでなく、症状、上昇速度、腎・心機能で決める
- 原因検索の最初の分岐はintact PTH
- 補液は固定速度ではなく、体液量と再評価で調整する
- カルシトニンは橋渡し、骨吸収抑制薬は持続効果を担う