この記事の結論

片頭痛は、特徴が合うこと危険な二次性頭痛を見逃していないことの両方で診断します。初診では「いつ最大になったか」「いつもと同じか」「神経症状・発熱・妊娠産褥・免疫抑制はないか」を先に確認し、安全を確かめてから発作時治療へ進みます。

治療は、軽〜中等度ならアセトアミノフェンまたはNSAIDs、中等度〜重度または反応不十分なら禁忌を確認してトリプタンを検討します。発作頻度と生活障害、急性期薬の使用日数を毎回記録し、必要なら予防療法へつなげるところまでが片頭痛診療です。

本記事は成人の一般的な片頭痛を想定した医療者向け教育資料です。妊娠・授乳、小児、高齢者、心血管疾患、脳血管疾患、重い肝腎障害では薬剤選択が異なるため、添付文書と専門科の助言を確認してください。

最初の10分で行うこと

  1. バイタル、意識、項部硬直、瞳孔、眼球運動、麻痺・失語・運動失調を確認する
  2. 発症時刻とピークまでの時間を聞き、突然1分以内に最大となった頭痛なら雷鳴頭痛として扱う
  3. 初発・最悪、発熱、癌・免疫抑制、妊娠産褥、外傷、抗凝固薬、新しい神経症状を確認する
  4. 既往の頭痛と同型か、持続時間、悪心、光・音過敏、動作による増悪、前兆を確認する
  5. 直近1か月の頭痛日数、急性期薬の使用日数、欠勤・活動制限を数える
  6. 二次性頭痛が疑わしければ、鎮痛だけで帰宅させず画像・採血・専門科相談へ進む

片頭痛らしさを言語化する

前兆のない片頭痛は、反復する4〜72時間の頭痛で、片側性、拍動性、中等度以上、日常動作で悪化のうち2項目以上と、悪心・嘔吐または光・音過敏を伴うのが典型です。ただし、両側性や非拍動性でも否定できません。

診療録には「片頭痛らしい」だけでなく、次を残します。

  • 発作の開始、最大時刻、持続、頻度
  • 頭痛の性状と随伴症状
  • 前兆の有無と内容、神経症状の経過
  • 月間頭痛日数と服薬日数
  • 今回が普段の発作と同じか
  • 診察で確認した二次性頭痛の陰性所見

鑑別診断

病態 手がかり 次の一手
くも膜下出血 雷鳴頭痛、項部硬直、労作時発症 緊急頭部CT、必要に応じCTA・腰椎穿刺
髄膜炎・脳炎 発熱、意識変容、項部硬直 培養、画像適応を判断し髄液検査と早期治療
脳静脈洞血栓症 妊娠産褥、血栓リスク、痙攣、乳頭浮腫 CTVまたはMRV
頸動脈・椎骨動脈解離 頸部痛、Horner症候群、局在神経症状 頭頸部CTA/MRA
巨細胞性動脈炎 50歳以上の新規頭痛、顎跛行、視症状 ESR/CRP、超音波等、疑えば治療を遅らせない
急性閉塞隅角緑内障 眼痛、充血、霧視、散瞳 眼圧評価、緊急眼科相談
可逆性脳血管攣縮症候群 反復する雷鳴頭痛、産褥・血管作動薬 CTA/MRA、初回正常でも再評価

レッドフラッグ

  • 突然発症し、1分以内に最大強度となった
  • 初めて、最悪、または従来と明らかに異なる
  • 発熱、髄膜刺激徴候、意識障害、痙攣
  • 局在神経症状、乳頭浮腫、眼痛・視力低下
  • 50歳以降の新規頭痛
  • 癌、HIV・免疫抑制、出血傾向・抗凝固薬
  • 妊娠・産褥、高度高血圧
  • 体位、咳、運動、性交で誘発または悪化
  • 日ごとに進行する、早朝嘔吐を伴う

検査の考え方

典型的な反復性片頭痛で神経診察が正常、レッドフラッグがなければ、ルーチンの画像検査は不要です。一方、レッドフラッグがあれば、疑う病態と時間軸に合わせて単純CT、CTA/CTV、MRI/MRA/MRV、髄液検査を選びます。

片頭痛を証明する採血はありません。妊娠反応、炎症反応、電解質などは鑑別に応じて提出します。

急性期治療

1. 早く、十分量で開始する

  • 軽〜中等度:アセトアミノフェンまたはNSAIDsを、禁忌を確認して早期に使う
  • 中等度〜重度、または鎮痛薬で不十分:トリプタンを検討する
  • 悪心・嘔吐:制吐薬を併用し、経口困難なら非経口経路を選ぶ
  • 脱水や摂取不良:必要量を補液する

トリプタンは冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、コントロール不良の高血圧などで禁忌または慎重投与です。製剤ごとの禁忌と相互作用を必ず確認します。オピオイドは依存、再受診、薬剤使用過多頭痛につながるため、原則として第一選択にしません。

2. 効果を具体的に再評価する

「効いた」だけでなく、2時間後の痛み、日常動作への復帰、再燃、有害事象を確認します。複数回の適切な使用でも不十分なら、薬剤、剤形、併用、診断を見直します。

予防療法と薬剤使用過多

発作が多い、生活障害が大きい、急性期治療が効かない・使えない、急性期薬の使用日数が増えている場合は予防療法を相談します。併存症、妊娠希望、体重、血圧、気分症状、費用、本人の希望を合わせて選び、十分な期間で効果と有害事象を評価します。従来薬に加え、適応を満たせばCGRP関連薬も選択肢です。

薬剤使用過多頭痛は、月15日以上の頭痛があり、急性期薬を3か月超にわたり過量使用している場合に疑います。目安はトリプタン・オピオイド・複合鎮痛薬で月10日以上、単一成分の鎮痛薬で月15日以上です。頭痛日記で「頭痛日」と「服薬日」を別々に数えます。

よくある落とし穴

  • 若年者だから二次性頭痛はないと決める
  • 「片頭痛持ち」という既往だけで、今回の変化を聞かない
  • 前兆とTIAを、進展様式や持続時間を確認せず区別する
  • 効果判定をせず同じ頓用薬だけを反復する
  • 月間頭痛日数ではなく発作回数だけを数える
  • 妊娠可能性や心血管系禁忌を確認せず処方する
  • 急性期薬の使用日数を聞かず、薬剤使用過多を見逃す

よくある質問

Q. 頭痛が両側性なら片頭痛ではありませんか?

いいえ。片側性は特徴の一つですが必須ではありません。持続時間、強度、動作での増悪、悪心、光・音過敏など全体で判断します。

Q. MRIを撮れば片頭痛と診断できますか?

できません。画像は二次性頭痛の評価に使います。片頭痛の診断は病歴と診察が中心です。

Q. 予防薬はいつまで続けますか?

効果、有害事象、患者の希望を定期評価し、安定した後に漸減を検討します。一律の期間ではなく、頭痛日記を用いて共有意思決定します。

適用範囲

成人の反復性頭痛を診る救急・外来・病棟での初期評価を対象とします。小児、妊娠・授乳、群発頭痛、持続性連日性頭痛、重い基礎疾患がある患者は、各領域のガイドラインと専門医評価を優先してください。

まとめ

  • 片頭痛の前に、発症速度とレッドフラッグで二次性頭痛を除外する
  • 急性期薬は早期に使い、禁忌と2時間後の機能回復まで確認する
  • 毎月の頭痛日数・服薬日数・生活障害を数える
  • 生活障害や薬剤使用過多があれば、予防療法と治療計画を提案する