結論:原因不明の低酸素血症では、臥位と座位のSpO2を測り比べる

Platypnea-orthodeoxia syndrome(POS)は、座位・立位で呼吸困難と低酸素血症が悪化し、臥位で軽快する症候群です。心内シャント、肺内シャント、肺底部優位の換気血流不均衡などで起こります。

診断の入口は高度な検査ではなく、体位変換前後の症状とSpO2を記録することです。

最初の10分

  1. 重症低酸素血症としてABCDE、酸素投与、モニターを行う
  2. 肺塞栓、気胸、肺炎、心不全、ACS、気道閉塞を優先して評価する
  3. 安全を確保して臥位のSpO2・呼吸数・症状を記録する
  4. 座位または立位で同じ項目を再測定する
  5. 必要なら各体位で動脈血ガスを採る
  6. 心電図、胸部X線、心エコー、造影CTを病態に合わせて行う
  7. POSを疑えば循環器・呼吸器科へ相談し、体位を変えたバブルエコーを依頼する

POSの目安として、立位でPaO2が4 mmHg超低下、またはSpO2が5%以上低下する定義が使われます。閾値だけでなく、症状と再現性を重視します。

原因を3群で考える

機序 代表例
心内右左シャント PFO、ASD、心房中隔瘤+大動脈拡張、亀背、肺切除後など
肺内シャント 肺動静脈奇形、肝肺症候群
換気血流不均衡 肺底部優位の肺実質病変、無気肺、ARDS、COPD、肺切除後

PFOは一般人口にもみられるため、見つけただけで原因とは限りません。体位変換により右左シャントが増え、低酸素と症状を説明できることを示します。

バブルエコーの実際

攪拌生理食塩水を用いた造影心エコーが診断の中心です。

  • 可能なら臥位と座位で行う
  • Valsalva手技などで一過性シャントを誘発する
  • 左房に早期、概ね3心拍以内に気泡が出れば心内シャントを示唆
  • 数心拍遅れて出現すれば肺内シャントを示唆

気泡出現のタイミングは絶対ではありません。心拍出量、シャント量、検査手技で変わるため、形態画像と統合します。

経胸壁心エコーで陰性でも疑いが強ければ、経食道心エコーや経頭蓋ドプラ、心臓カテーテルを検討します。鎮静・臥位でシャントが減り偽陰性になる可能性を検査者へ伝えます。

バブルエコー後の分岐

早期陽性:心内シャント

PFO、ASD、心房中隔瘤と、血流方向を変える解剖学的要因を評価します。大動脈拡張、胸郭変形、右房圧上昇、肺切除歴などを確認します。

症候性で因果関係が明確なら、経皮的閉鎖または外科的修復を検討します。閉鎖前に肺高血圧と右心機能を評価し、圧逃がしとして必要なシャントを閉じないようにします。

遅延陽性:肺内シャント

造影CTで肺動静脈奇形を検索し、適応があれば塞栓術を検討します。慢性肝疾患、低酸素、ばち指があれば肝肺症候群を評価します。

陰性:実質肺病変・換気血流不均衡

胸部CTで肺底部優位病変、無気肺、横隔膜機能、胸水などを確認します。POSは最終診断ではなく、原因疾患を特定するための症候群名です。

よくある失敗

  • 低酸素血症を臥位だけで測定する
  • PFOを見つけただけで原因と断定する
  • バブルエコーを臥位のみで行い陰性とする
  • 肺塞栓や肺炎など頻度の高い危険疾患を先に除外しない
  • 遅延気泡を「心内シャント」と誤解する
  • 肺高血圧を評価せずシャント閉鎖を進める

カルテ記載例

「原因不明の低酸素血症。臥位SpO2 95%、座位で84%へ低下し呼吸困難が再現、臥位で改善するためPOSを疑う。PE・肺炎・気胸・心不全を評価しつつ、臥位/座位とValsalvaを用いた攪拌生食バブルTTEを依頼する。気泡出現タイミングと解剖学的異常から心内・肺内シャントを鑑別する。」

Take-home message

  • 原因不明の低酸素では体位別SpO2を測る
  • 座位でSpO2が5%以上低下すればPOSを疑う
  • バブルエコーは体位と誘発手技を意識する
  • 早期気泡は心内、遅延気泡は肺内シャントを示唆する
  • POSの診断後は原因疾患を特定して治療する