結論:HLHは「高フェリチン血症」という検査異常ではなく、進行する全身性炎症症候群

成人HLH(hemophagocytic lymphohistiocytosis:血球貪食性リンパ組織球症)は、制御不能な免疫活性化により、多臓器障害へ進み得る臨床症候群です。持続発熱、脾腫、2系統以上の血球減少、肝障害、凝固障害、高トリグリセリド血症、低フィブリノゲン血症、高フェリチン血症が組み合わさったら疑います。

骨髄で血球貪食像が見つかるまで待ちません。重症患者では全身管理、原因検索、血液内科への相談を同時に進めます。

疑うきっかけ

  • 原因不明の発熱が持続する
  • 血小板・Hb・好中球が同時に低下していく
  • 脾腫、肝腫大、リンパ節腫脹
  • AST・ALT、LDH、ビリルビンが上昇する
  • フェリチンが著明に高値、または急速に上昇する
  • トリグリセリド上昇、フィブリノゲン低下、DIC様所見
  • 意識障害、けいれん、呼吸循環不全など多臓器障害

成人では、極端な高フェリチン血症でもHLHに特異的ではありません。重症感染症、肝不全、悪性腫瘍、成人Still病なども並行して評価します。

最初の採血と評価

病態に応じ、次を早期に提出します。

  • CBC・白血球分画、末梢血塗抹
  • AST、ALT、LDH、ビリルビン、ALP、腎機能、電解質
  • PT-INR、APTT、フィブリノゲン、Dダイマー
  • フェリチン、空腹時トリグリセリド
  • CRP、血液培養など感染症検査
  • 可溶性IL-2受容体(sIL-2R)
  • 病態に応じてEBV-DNA、CMV、HIV、肝炎ウイルス、真菌・結核評価

NK細胞活性など、結果に時間がかかる検査もあります。結果を待って初期対応を止めません。輸血や血漿製剤の前に採取できる検体は確保しますが、救命処置を遅らせないことが優先です。

HLH-2004とHScoreをどう使うか

HLH-2004は、分子診断または8項目中5項目を満たすことを診断の枠組みとします。8項目は、発熱、脾腫、2系統以上の血球減少、高トリグリセリド血症または低フィブリノゲン血症、血球貪食像、NK細胞活性低下、高フェリチン血症、可溶性CD25高値です。

ただし、もともとは小児を中心に作られた基準で、成人の治療開始を機械的に決める基準ではありません。HScoreは、免疫抑制の有無、体温、臓器腫大、血球数、フェリチン、トリグリセリド、フィブリノゲン、AST、骨髄所見から反応性HLHの確率を見積もる補助ツールです。

どちらも臨床判断を置き換えません。経時変化、臓器障害、原因疾患の可能性を合わせて使います。

骨髄の血球貪食像は必要条件でも十分条件でもない

初期の骨髄で血球貪食像がなくてもHLHは否定できません。逆に、重症感染症、輸血後、他の炎症状態でも血球貪食像を認めます。

骨髄検査の目的は、血球貪食像を探すだけではありません。リンパ腫、白血病、感染症など原因疾患を探し、治療方針を決めるために行います。必要に応じてフローサイトメトリー、染色体・遺伝子検査、培養・病原体検査を組み合わせます。

原因検索は治療と同時に進める

成人HLHの主な誘因は次のとおりです。

  • 悪性腫瘍:特にリンパ腫、白血病
  • 感染症:EBVなどのウイルス、細菌、結核、真菌、寄生虫
  • 自己免疫・自己炎症疾患:成人Still病、SLEなどに伴うMAS
  • 薬剤、移植、免疫療法
  • 原発性・遺伝性HLH

身体診察、造影CTやPET/CT、骨髄・リンパ節・皮膚などの生検を、患者の安定性に応じて選びます。リンパ腫が疑われる場合、可能なら治療前の組織採取を計画しますが、急速な悪化時には救命を優先します。

治療は「炎症を抑える」と「誘因を治す」の両輪

治療は重症度と誘因で異なります。デキサメタゾン、エトポシドを含む治療や、疾患別治療が検討されますが、感染症、悪性腫瘍、MASでは優先順位や薬剤が変わります。血液内科・感染症科・膠原病科・集中治療部門と早期に相談します。

並行して、呼吸循環管理、DIC・出血、感染症、肝腎障害、腫瘍崩壊などを管理します。好中球減少や免疫抑制下では、培養採取後の経験的抗菌薬を遅らせません。

よくある落とし穴

  • フェリチン単独でHLHと診断する
  • 骨髄に血球貪食像がないため除外する
  • HLH-2004の5項目が揃うまで相談しない
  • 炎症を抑えることだけに集中し、リンパ腫や感染症の検索が遅れる
  • sIL-2R高値をHLHに特異的と考える
  • 一時点の値だけを見て、血球数・フェリチン・フィブリノゲンの推移を追わない

適用範囲

成人の二次性HLHを疑う場面の初期評価を想定した教育用の整理です。治療開始と薬剤選択は病勢と誘因で大きく変わるため、疑った段階で血液内科を中心とした専門チームへ相談してください。