結論:不明熱は「検査を大量に出す病名」ではなく、診断仮説を作り直すための症候群

古典的不明熱は、複数回38.3℃以上の発熱が3週間を超えて続き、適切な基本評価を行っても原因が不明な状態を指します。現在は「入院何日」という条件より、免疫正常者に必要な最低限の診断評価を終えたかが重視されます。

救急外来で一度原因がわからない発熱は、まだ不明熱ではありません。まず重症感染症、好中球減少、HIV関連、医療関連発熱など、それぞれの緊急性に沿って扱います。

最初にすること

  1. 体温を客観的に記録し、発熱の事実を確認する
  2. 全薬剤・サプリ・市販薬の開始日と中止日を時系列にする
  3. 過去の画像を自分たちで見直す
  4. 病歴と身体診察を最初から反復する
  5. 検査異常を「診断への手掛かり」か「非特異的変化」か分ける
  6. 最も診断収率の高い病変を探し、生検可能性を考える

「前医で異常なし」という情報をそのまま引き継がず、何を、いつ、どの検査法で調べたかを確認します。

原因は5群で整理する

  • 感染症:感染性心内膜炎、結核、深部膿瘍、脊椎炎など
  • 非感染性炎症疾患:血管炎、成人Still病、リウマチ性多発筋痛症など
  • 悪性腫瘍:リンパ腫、白血病、腎細胞癌など
  • その他:薬剤熱、甲状腺炎、血栓症、炎症性腸疾患など
  • 未診断

分類表を埋めるために検査を並べるのではなく、患者固有の手掛かりから優先順位をつけます。

病歴を取り直す質問

  • 海外・国内旅行、居住歴、結核曝露
  • 動物、ダニ、蚊、土壌、水、職業
  • 歯科治療、手術、人工物、血管内デバイス
  • 性的接触、注射薬物、輸血
  • 新薬だけでなく、長期薬の増量・再開
  • 頭痛、顎跛行、視覚症状
  • 関節痛、筋痛、皮疹、口腔・陰部潰瘍
  • 寝汗、体重減少、掻痒
  • 背部痛、局在痛、時間帯

発熱パターン単独の診断特異度は低く、稽留熱・弛張熱などの形だけで疾患を当てにいきません。

身体診察は繰り返す

皮疹、リンパ節、眼底、口腔・歯牙、側頭動脈、心雑音、脾腫、脊椎叩打痛、関節、陰部、爪、血管内カテーテルを系統的に診ます。初診時になかった所見が経過中に出現することがあります。

患者の訴えが変わったときは、検査追加より先にもう一度診察します。

最低限の初期評価

施設や患者背景で異なりますが、一般に次を組み合わせます。

  • CBC分画、末梢血塗抹
  • 電解質、腎機能、肝胆道系、LDH
  • CRP、ESR
  • 尿検査・尿培養
  • 抗菌薬前の複数セット血液培養
  • HIV検査
  • 結核評価:曝露と地域性に応じて選択
  • 胸部画像、腹部画像

そこから心雑音なら心エコー、リンパ節なら生検、蛋白尿・血尿なら尿沈渣と腎炎評価、単クローン性蛋白なら血液疾患評価へ進みます。自己抗体や腫瘍マーカーを無差別に並べると、偽陽性が診療を迷わせます。

FDG-PET/CTをいつ使うか

基本評価で局在が得られず、炎症反応が持続するとき、FDG-PET/CTは感染、炎症、腫瘍の活動部位を可視化し、生検標的を決める助けになります。2024年のEANMコンセンサスでは、診断への有用性は概ね半数程度とされます。

PET陽性だけで診断は確定しません。血管炎、感染、腫瘍で同じように集積するため、最終的には病理・培養・臓器特異的検査へつなげます。陰性は局在疾患の可能性を下げ、予後情報になることがあります。

生検は「最後の手段」ではない

表在リンパ節、皮膚、側頭動脈、骨髄、肝、腎など、診断仮説に最も近い組織を選びます。壊死中心の穿刺や、ステロイド開始後のリンパ節生検では診断率が下がることがあります。

「もう少し採血を追加してから」ではなく、画像で狙える病変が出た時点で専門科と生検を計画します。

経験的抗菌薬・ステロイドは原則避ける

安定した古典的不明熱では、根拠のない広域抗菌薬やステロイドは診断所見を消し、薬剤有害事象を増やします。例外は、循環不全、好中球減少、視力障害リスクのある巨細胞性動脈炎、重症結核が強く疑われる状況などです。

例外では、必要な培養・生検を可能な限り先に行い、治療理由と再評価時刻を記録します。

よくある失敗

  • 一度原因不明の発熱を不明熱と呼ぶ
  • 薬剤歴を「新薬なし」で終える
  • 発熱パターンから病名を決める
  • 自己抗体と腫瘍マーカーを無差別に提出する
  • 原画像を見ず、読影レポートだけを読む
  • 生検可能な病変があるのに経験的ステロイドを始める

カルテ記載例

「38.3℃以上の発熱が4週持続し、免疫正常。基本検査と胸腹部画像で診断に至らず、古典的不明熱として再構成する。薬剤・曝露・人工物・歯科・性行動を時系列で再聴取し、皮膚、リンパ節、眼底、心雑音、側頭動脈、脊椎、関節を再診察。血液培養を抗菌薬前に採取し、既存画像を再読影。局在が得られなければFDG-PET/CTで生検標的を探索する。」

Take-home message

  • 一度原因不明の発熱は、まだ不明熱ではない
  • 薬剤歴、原画像、反復診察を最初からやり直す
  • 検査は患者固有の手掛かりに合わせる
  • FDG-PET/CTは診断名をつける検査ではなく、生検部位を探す検査
  • 安定患者への根拠のない抗菌薬・ステロイドを避ける