結論:局所発赤がなくても疑い、抗菌薬前に末梢血を含む2セットを採る
カテーテル関連血流感染症(CRBSI)は、刺入部の発赤や排膿がなくても否定できません。血管内カテーテル留置中の発熱、悪寒戦慄、低血圧で感染源が明らかでなければ、早い段階で鑑別に入れます。
重要なのは、抗菌薬開始前に適切な血液培養を採り、不要なカテーテルを抜去し、敗血症を遅滞なく治療することです。
最初の10分
- ABCDEと敗血症性ショックを評価する
- すべての末梢・中心静脈カテーテルの種類、挿入日、使用目的を確認する
- 刺入部、皮下トンネル、ポート部の発赤・圧痛・排膿を診る
- 抗菌薬前に、異なる採血部位から血液培養を2セット以上採る
- 少なくとも1セットは末梢静脈から採取する
- CRBSIが疑わしければカテーテル血も同時採取し、採取部位をラベルする
- 不要なラインは抜去し、重症例は培養採取後すぐ経験的治療を開始する
疑う場面
- カテーテル留置中の原因不明の発熱・悪寒戦慄・低血圧
- 輸液開始直後の悪寒戦慄
- カテーテル閉塞や機能不良を伴う発熱
- 刺入部、皮下トンネル、ポート部の発赤・圧痛・排膿
- 他の感染源を治療しているのに菌血症が持続する
局所所見はあれば有用ですが、感度は十分ではありません。「刺入部がきれい」は除外所見になりません。末梢静脈カテーテルも感染源になり得ます。
血液培養の採り方
末梢静脈から2セット採ることが基本です。カテーテルを感染源として評価する場合は、末梢血と各カテーテルルーメンから同時刻に採取し、採血量をそろえ、ラベルを明確にします。
確定診断を支持する代表的所見は次です。
- 末梢血とカテーテル先端から同一菌が検出される
- カテーテル血の定量培養が末梢血より有意に多い
- カテーテル血が末梢血より2時間以上早く陽性化する(differential time to positivity)
カテーテル先端培養だけの陽性は、血流感染を証明しません。抜去した場合も、必ず末梢血培養と臨床像を統合します。
「1本だけ陽性」をどう考えるか
菌種で重みが大きく異なります。
- Staphylococcus aureus、Candida属、グラム陰性桿菌は、1ボトルでも安易にコンタミとしない
- コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、Corynebacterium属、Bacillus属などは皮膚常在菌混入が多いが、人工物、免疫不全、複数セット陽性では真の菌血症を考える
- Staphylococcus lugdunensisは病原性が高く、通常のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌と同じ扱いにしない
培養結果だけでなく、陽性化時間、陽性ボトル数、採取部位、臨床経過、人工物の有無を確認します。
いつカテーテルを抜くか
不要なカテーテルは抜去します。長期留置カテーテルでも、次の状況では原則として抜去を強く検討します。
- 敗血症、血行動態不安定
- トンネル感染、ポケット感染
- 心内膜炎、化膿性血栓性静脈炎、遠隔感染巣
- 適切な治療後も72時間を超えて菌血症が持続
- S. aureus、Pseudomonas aeruginosa、Candida属など病原性の高い菌
代替アクセスがない場合、出血リスクが極めて高い場合などは、感染症科とカテーテル温存・ロック療法を個別に検討します。ガイドワイヤー交換を感染源除去の代わりに安易に用いません。
初期抗菌薬の考え方
敗血症なら培養採取後ただちに経験的治療を開始します。選択は重症度、グラム染色、院内耐性率、既往培養、免疫状態、感染源に合わせます。
- グラム陽性球菌:MRSAを含む抗菌薬を検討
- 重症、好中球減少、鼠径部カテーテル、広域抗菌薬曝露:グラム陰性桿菌もカバー
- TPN、長期広域抗菌薬、造血器悪性腫瘍などカンジダ血症リスクが高い重症例:経験的抗真菌薬を検討
菌種と感受性が判明したら狭域化します。治療期間は菌種、合併症、血培陰性化、カテーテル抜去の可否で変わります。
血培陽性後に忘れないこと
- 陰性化確認のため再採血する
- S. aureus菌血症では心エコーと遠隔感染巣を評価する
- Candida血症では感染症科へ相談し、持続菌血症と播種性病変を評価する
- 背部痛、関節痛、頭痛、新規雑音、皮膚所見を再問診・再診察する
- 抜去後も発熱が続けば化膿性血栓性静脈炎を考える
よくある失敗
- 刺入部発赤がないのでCRBSIを除外する
- カテーテル血だけ採り末梢血を採らない
- 採取部位をラベルしない
- CandidaやS. aureusの1ボトル陽性をコンタミ扱いする
- 不要なカテーテルを残したまま抗菌薬だけを続ける
- 菌血症が持続しているのに心内膜炎・血栓・遠隔感染巣を探さない
カルテ記載例
「中心静脈カテーテル留置中の悪寒戦慄を伴う発熱。刺入部発赤はないがCRBSIを除外できない。抗菌薬前に末梢2セットとカテーテル各ルーメンから同時採血し、採取部位を明記した。ラインは不要のため抜去。敗血症として経験的治療を開始し、菌種判明後に狭域化する。血培陰性化、心内膜炎・遠隔感染巣を評価する。」
Take-home message
- 局所所見がなくてもCRBSIは否定できない
- 抗菌薬前に末梢血を含む2セット以上を採る
- 採取部位と陽性時間差が診断に役立つ
- 不要なカテーテルは早期に抜去する
- S. aureus、Candida、グラム陰性桿菌を安易にコンタミ扱いしない