感染症診療で確認する5つのポイント

みんほす!では、感染症の見方の型として、次の5つのポイントを挙げています。

  1. 背景
  2. 臓器
  3. 微生物
  4. 抗菌薬
  5. 経過観察

この記事では、1つ目のステップである感染症診療における「背景」について扱います。

背景は、次の3つの軸で考えます。

  • 免疫不全があるか
  • 解剖学的異常があるか
  • 耐性菌リスクがあるか

それぞれ、細菌・ウイルスを抑えられない理由がないか、細菌が住みやすい環境があるか、抗菌薬が効きにくい細菌がいる可能性がないかを考えていきます。

1. 免疫不全

免疫不全は、次の4つに分けて考えます。

  • 液性免疫不全
  • 細胞性免疫不全
  • 好中球機能異常
  • バリア異常

液性免疫不全

液性免疫は、細胞外の細菌を抗体で除去します。液性免疫不全では、抗体を作るB細胞や形質細胞の機能不全が起こり、細胞外の細菌を除去できなくなります。

具体的な疾患として、多発性骨髄腫やB細胞性リンパ腫などの血液疾患が挙げられます。

治療に関連するものとしては、脾臓摘出後、造血幹細胞移植、放射線化学療法、ステロイドなどの免疫抑制剤使用中が挙げられます。

液性免疫不全で問題となる細菌は、いわゆる莢膜保有菌です。

  • 肺炎球菌
  • 髄膜炎菌
  • クレブシエラ
  • インフルエンザ桿菌

これらを覚える語呂として、「Some Nasty Killers Have Some Capsule Protection」があります。

細胞性免疫不全

細胞性免疫は、T細胞の働きによって、細胞内寄生菌を含む細胞内の外敵を除去します。細胞性免疫不全では、T細胞の機能異常により、細胞内に潜む外敵を除去できなくなります。

具体的な疾患として、T細胞性リンパ腫、HIV、AIDSが挙げられます。また、単独では軽度ですが、糖尿病、腎不全、肝硬変も忘れてはいけません。

治療に関連するものとしては、放射線・化学療法や、ステロイドなどの免疫抑制薬使用が挙げられます。

細胞性免疫不全で考える外敵には、次のものがあります。

細菌では、リステリア、ノカルジアといった細胞内寄生菌や、黄色ブドウ球菌などが挙げられます。

ウイルスでは、ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルスなどが挙げられます。

真菌では、カンジダ、クリプトコッカス、ニューモシスチスなどが挙げられます。

このほか、トキソプラズマなどの原虫も含まれます。

好中球機能異常

好中球機能異常は、好中球が炎症部位へ駆け付けられない状態です。

具体的な疾患として、白血病などの血液疾患が考えられます。治療に関連するものとしては、放射線・化学療法後が挙げられます。

好中球が駆け付けられないことで、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、大腸菌、緑膿菌といった細菌感染症や、真菌感染症のリスクが上昇します。

バリア異常

体のバリアには、皮膚や粘膜があります。皮膚や粘膜にある細菌叢が破綻し、侵入門戸となる状態がバリア異常です。

具体例として、アトピー性皮膚炎による掻爬、褥瘡、外傷が挙げられます。

治療に関連するものとしては、手術、気管挿管、中心静脈カテーテルが挙げられます。点滴ルートや尿道カテーテルの挿入にも注意が必要です。

ここまでが、液性免疫不全、細胞性免疫不全、好中球機能異常、バリア異常という、免疫不全の4つの分類です。

2. 解剖学的異常

解剖学的異常は、大きく次の2つに分けて考えます。

  • これまでの病気
  • 流れが悪い状態

これまでの病気

これまでの病気は、さらに3つに分けて考えます。

感染症の既往歴

感染したことには理由があるはずです。感染症を繰り返している場合は、特にその背景を確認します。

慢性的な炎症による粘膜破綻

慢性的な炎症による粘膜破綻があると、菌が侵入しやすい状態になります。具体例として、COPDや弁膜症が挙げられます。

体内人工物

体内人工物は、菌の棲家となりやすいものです。具体例として、ペースメーカーや人工弁が挙げられます。

流れが悪い状態

流れが悪い状態も、3つに分けて考えます。

閉塞機転

固形がん、結石、前立腺肥大など、閉塞機転となるものを確認します。

再建術後

胃がん術後やストマ増設後など、生理的な流れと異なる場合は注意が必要です。

機能的な通過障害

神経因性膀胱や嚥下機能低下などが当てはまります。

3. 耐性菌リスク

耐性菌リスクは、大きく4つのポイントに分けて考えます。

住居

患者さんがどこに住んでいるのかを確認します。

  • 自宅
  • 施設
  • 入院中の病院

医療者や耐性菌との接触機会を考えます。自宅でも在宅医療を受けている場合は、医療者との接触機会が変わります。

入院歴・抗菌薬使用歴

5日以上の長期入院歴や、90日以内の点滴抗菌薬使用歴を確認します。過去にどの抗菌薬を使用していたのかも確認できるとよいでしょう。

血液透析・血管内留置カテーテル

血液透析や血管内留置カテーテルの有無も確認します。

耐性菌の保菌状況

耐性菌の保菌状況と過去の保菌状況を確認します。家族内の耐性菌保菌歴にも目を向けます。

まとめ

感染症診療で患者背景を確認するときは、次の3つの軸で考えます。

  1. 免疫不全
  2. 解剖学的異常
  3. 耐性菌リスク

免疫不全は、液性免疫不全、細胞性免疫不全、好中球機能異常、バリア異常の4つに分けます。

解剖学的異常は、これまでの病気と流れが悪い状態の2つに分けます。これまでの病気では、感染症の既往、慢性炎症による粘膜破綻、体内人工物を確認します。流れが悪い状態では、固形がんや前立腺肥大、結石などの閉塞機転、再建術後、機能的通過障害を確認します。

耐性菌リスクでは、住居、治療歴、血液透析や血管内留置カテーテルの有無、耐性菌の保菌状況という4つのポイントを確認します。

明日からの感染症診療に活かしていきましょう。