結論:原因当てより先に、絞扼を除外する

小腸閉塞(small bowel obstruction:SBO)を見たら、まず腸管虚血・絞扼・穿孔がないかを判断します。食物塊やベゾアは比較的まれな原因ですが、開腹歴、消化管手術、歯牙不良、摂食行動、特定食品の大量摂取を手掛かりに疑います。

「食物が原因らしいから保存的に見られる」とは限りません。原因にかかわらず、腹膜刺激、持続痛、循環不全、CTの虚血所見があれば緊急手術の可能性を外科と判断します。

最初の10分で行うこと

  1. ABC、バイタル、意識、尿量、脱水・敗血症所見を確認する
  2. 発症時刻、間欠痛か持続痛か、嘔吐、排便・排ガスを聴取する
  3. 腹部手術歴、ヘルニア、炎症性腸疾患、腫瘍歴を確認する
  4. 鎮痛しながら圧痛、反跳痛、筋性防御、ヘルニア門を診察する
  5. 絶飲食、静脈路、補液、電解質補正を開始する
  6. 血算、電解質、腎機能、CRP、乳酸、血液ガスを採る
  7. 造影CTの可否を判断し、早期に外科へ相談する
  8. 嘔吐・胃拡張・誤嚥リスクが高ければ胃管減圧を行う

絞扼・虚血を疑うレッドフラッグ

  • 持続する強い腹痛、腹膜刺激症状
  • 頻脈、低血圧、発熱、意識変容
  • 代謝性アシドーシス、乳酸上昇
  • CTでclosed loop、腸間膜血管の渦巻き、造影不良
  • 腸間膜浮腫、腹水、腸管気腫、門脈ガス、遊離ガス
  • 保存治療中の痛み・炎症反応・臓器障害の悪化

乳酸が正常でも早期虚血は否定できません。単一の数値ではなく、痛みの質、診察の推移、CTを統合します。

CTで見る順番

  1. 小腸拡張と遠位腸管の虚脱があるか
  2. transition pointはどこか、単一か複数か
  3. closed loopと虚血所見がないか
  4. ヘルニア、腫瘍、炎症、胆石など別の原因はないか
  5. 腸管内にmottled gasを含む食物塊様構造がないか

食物性ベゾアは、閉塞部の腸管内に不均一なガスを含む塊として見えることがあります。胃内にも同様の塊がないか確認します。ただし便様内容との区別が難しく、画像だけで確定しません。

保存治療と手術の分岐

腹膜炎、絞扼、虚血がなければ、癒着性SBOでは絶飲食、補液、電解質補正、必要時の胃管減圧による非手術治療を検討します。開始時点で外科と方針を共有し、再診察と再検査の時刻、手術へ切り替える条件を明文化します。

水溶性造影剤は、施設プロトコルのもとで診断・治療反応予測に用いられます。誤嚥リスクや穿孔疑いを評価し、投与後の画像時刻と判定基準を外科と合わせます。造影剤投与が手術を遅らせてはいけません。

食物塊がtransition pointで閉塞している、保存治療に反応しない、虚血が疑わしい場合は手術が必要になり得ます。近位で到達可能な病変では内視鏡が検討されることもありますが、適応は専門科が判断します。

原因検索と再発予防

背景には、胃切除・迷走神経切離などによる消化機能変化、腸管狭窄、歯牙不良、咀嚼不十分、摂食障害、食物繊維の多い食品の大量摂取が隠れます。原因食品だけを禁止するのではなく、歯科、嚥下、食行動、基礎疾患を評価します。

退院時は、十分な咀嚼、急いで大量に食べないこと、症状再燃時の受診基準を具体的に説明します。食事制限は栄養状態を悪化させないよう、外科・栄養士と個別化します。

よくある落とし穴

  • 開腹歴があるため癒着性と決めつけ、別原因を探さない
  • 痛みが一時的に軽くなったことを虚血否定に使う
  • 乳酸正常だけで絞扼を除外する
  • 胃管排液が減っただけで閉塞解除と判断する
  • 水溶性造影剤の実施が外科相談を遅らせる
  • 退院時に食物名だけを伝え、咀嚼・歯科・狭窄を評価しない

FAQ

単純X線だけで診断できますか?

腸管拡張の手掛かりにはなりますが、原因、transition point、closed loop、虚血の評価には造影CTが重要です。腎機能やアレルギーを踏まえて撮像法を決めます。

腸蠕動音が亢進していれば絞扼はありませんか?

いいえ。腸音は病期や観察者で変わり、絞扼の除外には使えません。

何日まで保存治療できますか?

固定日数では決めません。ガイドラインは癒着性SBOで約72時間の試行を一つの目安としますが、悪化所見があれば直ちに手術評価へ切り替えます。

適用範囲と限界

本記事は成人の機械的小腸閉塞の初期対応を扱います。術後早期、小児、妊娠、Crohn病、悪性腫瘍、放射線性狭窄では病態と治療が異なるため、早期に専門科へ相談してください。