結論:心拍数ではなく、徐脈による循環不全があるかで動く
徐脈を見たら、低血圧、急性意識障害、ショック、虚血性胸部不快感、急性心不全があるかを判断します。これらが徐脈に起因すると考えられれば、原因検索と治療を同時進行します。
2025年AHAアルゴリズムでは、アトロピン初回1 mg静注、3〜5分ごとに反復、最大3 mgです。無効なら経皮ペーシング、ドパミンまたはアドレナリン持続投与を行い、専門家相談と経静脈ペーシングを検討します。
最初の10分で行うこと
- ABC、脈拍、血圧、意識、末梢灌流、胸痛、肺うっ血を確認する
- モニター、除細動・ペーシングパッド、静脈路を準備する
- 12誘導心電図を記録するが、不安定なら治療を遅らせない
- 血糖、電解質、血液ガス、腎機能、虚血、甲状腺、薬剤を評価する
- β遮断薬、非DHP Ca拮抗薬、ジゴキシン、抗不整脈薬の最終投与を確認する
- 症候性ならアトロピンとペーシング準備を並行する
- Mobitz II、高度・完全房室ブロック、wide QRSなら早期に循環器へ連絡する
レッドフラッグ:徐脈による循環不全の5徴候
- 低血圧
- 急性の意識変化
- ショック徴候
- 虚血性胸部不快感
- 急性心不全
徐脈と低血圧が同時にあっても、敗血症、出血、肺塞栓など別のショックが主因のことがあります。徐脈を治療しながら、ショック全体を再評価します。
可逆的原因を同時に探す
- 急性冠症候群、とくに下壁梗塞
- 低酸素、アシドーシス
- 高K血症、低体温
- β遮断薬、Ca拮抗薬、ジゴキシンなど
- 甲状腺機能低下、副腎不全
- 迷走神経反射、神経原性ショック
- ペースメーカー不全
高K血症や薬物中毒では、徐脈アルゴリズムだけでなく原因特異的治療を急ぎます。
心電図で危険度を判断する
すぐ相談する波形
- Mobitz II型2度房室ブロック
- 2:1以上の高度房室ブロック
- 完全房室ブロック
- 新規のwide QRSを伴う房室ブロック
- 交互脚ブロック、失神を伴う伝導障害
Wenckebach型でも、症候性、下位伝導障害が疑われる、虚血・薬剤・術後などの背景があれば軽視しません。
治療フロー
1. アトロピン
初回1 mg静注し、必要なら3〜5分ごとに最大3 mgまで反復します。高度房室ブロックやHis束以下の障害では効きにくいため、投与しながらペーシングを準備します。
2. 経皮ペーシング
アトロピン無効または直ちに不安定な高度房室ブロックでは早期に開始します。電気的捕捉だけでなく、脈拍・血圧で機械的捕捉を確認します。意識があれば疼痛が強いため、循環を悪化させない鎮痛・鎮静を検討します。
3. 循環作動薬と経静脈ペーシング
経皮ペーシングまでの橋渡し、または捕捉困難時にドパミン・アドレナリン持続投与を検討します。並行して循環器へ相談し、経静脈ペーシングと恒久的ペースメーカー適応を評価します。
よくある落とし穴
- 心拍数50/分という数字だけで治療する
- 旧版のアトロピン0.5 mgを使う
- アトロピン反復でペーシング準備が遅れる
- モニター波形だけで機械的捕捉を判断する
- 高K血症、薬剤中毒、低体温の治療を忘れる
- 低血圧をすべて徐脈のせいにする
FAQ
無症候性の洞性徐脈は治療しますか?
通常は原因評価と経過観察です。運動選手、睡眠中、薬剤など生理的・可逆的背景を確認します。
アトロピンが効かなければ何回も待ちますか?
いいえ。不安定な高度房室ブロックでは、アトロピン投与と同時に経皮ペーシングを準備します。
ペーシングの成功は心電図だけで判断しますか?
いいえ。QRS出現に加え、対応する脈拍と血圧上昇を確認します。
適用範囲と限界
脈のある成人徐脈の初期対応を想定した教育用記事です。心停止、小児、妊娠、薬物中毒、低体温では専用アルゴリズムと院内プロトコルを優先してください。