結論:S. aureusが血液培養から出たら、1セットでも真の菌血症として動く

黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)は、感染性心内膜炎、脊椎炎、関節炎、深部膿瘍などを合併し、死亡率も高い感染症です。血液培養1セットだけの陽性でも、Staphylococcus aureusと同定されたら安易にコンタミネーションとしません。

「抗MRSA薬を入れた」で終了せず、陰性化確認、感染源除去、心内膜炎・遠隔感染巣の評価、適切な治療期間までを一つのbundleとして進めます。

GPC clusterが出た最初の10分

  1. 敗血症・ショックを再評価する
  2. 血液培養のセット数、採取部位、陽性化時間を確認する
  3. 新たに末梢血培養を2セット採る
  4. MRSAを想定した経験的治療を開始する
  5. カテーテル、皮膚軟部組織、創、人工物を診察する
  6. 新規雑音、心不全、塞栓所見、背部痛、関節痛、頭痛を確認する
  7. 感染症科へ早期相談し、心エコーとsource controlを手配する

菌種がMSSAと判明したら、髄膜炎などの例外を除き、セファゾリンまたは抗ブドウ球菌用ペニシリンへ速やかに変更します。MSSAにバンコマイシンを継続するのは治療成績の面で不利です。

SAB bundle

1. 血液培養を陰性化まで追う

治療開始後24〜48時間ごとを目安に再採血し、陰性化を確認します。持続菌血症は、感染源未制御、心内膜炎、人工物感染、薬剤曝露不足を示唆します。

治療期間は「最初に陰性化した培養の採取日」を基準に考えるため、再採血しないと終了日を決められません。

2. 感染源を見つけて除去する

  • 不要な血管内カテーテルを抜去する
  • 膿瘍をドレナージする
  • 感染した人工物の除去可能性を検討する
  • 背部痛には脊椎MRI、関節痛には関節穿刺など症状に合わせる

全例に漫然と全身CTを行うのではなく、病歴・診察と持続菌血症から標的を絞ります。

3. 心内膜炎を評価する

2025年のレビューは、SAB全例で経胸壁心エコー(TTE)を行い、持続菌血症、持続発熱、転移性感染巣、心臓デバイスなど高リスク例では経食道心エコー(TEE)を行うことを支持しています。

TTE陰性だけで心内膜炎を除外できません。VIRSTAなどの予測スコアは補助に使い、個別の人工物や臨床経過を置き換えません。

4. 抗菌薬を適正化する

MRSA菌血症ではバンコマイシンまたはダプトマイシンが中心です。肺炎が感染源の場合、ダプトマイシンは肺サーファクタントで不活化されるため肺炎治療には用いません。

バンコマイシンは、重症MRSA感染症でAUC/MIC 400〜600 mg・h/L(MIC 1 mg/Lを仮定)を目標とするAUCガイド投与が推奨されています。トラフ15〜20 μg/mLを一律目標にすると腎障害が増えるため、薬剤師と早く連携します。

腎機能、体重、輸液量、透析、併用腎毒性薬を毎日確認します。菌血症が続く場合は、単純な増量ではなく感染源、感受性、薬物曝露、代替薬を感染症科と再評価します。

非複雑性と複雑性

非複雑性SABとするには、概ね次をすべて満たす必要があります。

  • 心内膜炎が除外されている
  • 植込み人工物がない
  • 追跡血液培養が速やかに陰性化する
  • 適切な治療開始後72時間以内に解熱する
  • 転移性感染巣がない

非複雑性は通常、陰性化から最低14日間の治療を行います。一つでも満たさない、心内膜炎・骨関節感染・人工物感染がある、菌血症が持続する場合は複雑性として4〜6週間以上を検討します。感染巣によりさらに長くなります。

よくある失敗

  • 1セット陽性なのでコンタミと判断する
  • 再採血せず「2週間」の起算日が不明になる
  • MSSA判明後もバンコマイシンを続ける
  • TTE陰性だけで心内膜炎を除外する
  • 腰痛や関節痛を寝たきりのせいにする
  • トラフ値だけを目標にVCMを増量する
  • 人工物があるのに非複雑性と安易に分類する

カルテ記載例

「血液培養2セットでGPC cluster。S. aureus菌血症を想定し、再度末梢2セット採取後に抗MRSA薬を開始。全身の皮膚、ライン、人工物を確認し、背部痛・関節痛・塞栓症状を再問診。TTEを手配し、高リスクならTEEを追加する。陰性化まで24〜48時間ごとに血培を追跡し、菌種・感受性判明後に最適化する。」

Take-home message

  • S. aureus血培陽性は1セットでもコンタミにしない
  • 血培は陰性化まで追跡する
  • source control、心エコー、遠隔感染巣検索をセットで行う
  • MSSAはβラクタム、MRSAはVCMまたはDAPを基本に個別化する
  • VCMはAUCガイド投与を薬剤師と行う