結論:最初に「膿があるか」「壊死性か」を分ける

皮膚の発赤を見たら、すべてを蜂窩織炎として抗菌薬で治療しないことが重要です。

  • 非化膿性蜂窩織炎:抗菌薬が中心
  • 膿瘍:切開排膿が中心
  • 壊死性軟部組織感染症:緊急手術が中心

この3つを分けるだけで、過剰な広域抗菌薬と危険な手術遅延の両方を減らせます。

最初の10分

  1. ABCDE、敗血症、ショックを確認する
  2. 病変を露出し、範囲、圧痛、波動、壊死、紫斑、水疱を診る
  3. 痛みが外観に比べて強くないか確認する
  4. 超音波で膿瘍を探す
  5. 糖尿病、免疫不全、浮腫、外傷、手術、注射、曝露を聞く
  6. 壊死性が疑わしければ、画像やスコアを待たず外科へ連絡する
  7. 病変境界を記録し、再評価時刻を決める

顔面・眼窩周囲、手、会陰、人工物周囲、深部感染、動物咬傷、水・海水曝露は通常の下肢蜂窩織炎とは別に扱い、早期に専門科へ相談します。

壊死性筋膜炎を疑うサイン

  • 見た目に比べて強い痛み
  • 数時間単位の急速な拡大
  • 木板状の硬結、深部圧痛
  • 紫斑、血疱、水疱、皮膚壊死
  • 皮膚感覚低下
  • 捻髪音、皮下ガス
  • 強い全身毒性、低血圧、意識変容
  • 適切に見える抗菌薬への反応不良

壊死性筋膜炎は初期に発赤しかないことがあります。LRINECは感度が不十分で、低スコアでも除外できません。CTやMRIは範囲評価に役立つ場合がありますが、臨床的疑いが高ければ外科的探索を遅らせません。

疑った時点で外科へ緊急相談し、血液培養、広域抗菌薬、蘇生を同時並行します。確定したA群溶血性レンサ球菌感染では毒素抑制を意識した治療へ調整します。

非化膿性蜂窩織炎

典型的な蜂窩織炎は、境界不明瞭な発赤、熱感、腫脹、圧痛を示します。主な標的はレンサ球菌で、状況によりMSSAを考えます。明らかな膿、MRSA既往、穿通外傷、注射薬物使用、重症感染などがなければ、全例でMRSAをカバーする必要はありません。

軽症の典型例では血液培養や創部培養は routine ではありません。重症、免疫不全、特殊曝露、菌血症が疑われる場合に選びます。

抗菌薬は重症度、アレルギー、腎機能、地域の感受性と院内指針に合わせます。改善している単純性蜂窩織炎では短期治療が基本で、初めから数週間〜数か月投与しません。

膿瘍は排膿する

波動、中心の膿栓、圧痛性腫瘤があれば膿瘍を疑います。診察で不明ならベッドサイド超音波が有用です。

単純な皮膚膿瘍の中心治療は切開排膿です。採取した膿の培養は、重症、再発、治療失敗、免疫不全、集団発生などで特に有用です。全身症状、宿主因子、病変の大きさ・部位をもとに抗菌薬併用を判断します。

「抗菌薬が効かない蜂窩織炎」の中には、排膿されていない膿瘍が隠れています。

蜂窩織炎に似る病気

  • うっ滞性皮膚炎
  • 深部静脈血栓症
  • 痛風・偽痛風
  • 接触皮膚炎
  • 虫刺症
  • 表在性血栓性静脈炎
  • 壊死性筋膜炎
  • 敗血症性関節炎、骨髄炎

両側下腿の対称性発赤、長期経過、掻痒優位、抗菌薬不応は、非感染性を再考するサインです。

24〜48時間後の再評価

抗菌薬開始直後は炎症反応により発赤が少し拡大して見えることがあります。単一時点ではなく、全身状態、痛み、発赤境界、腫脹、発熱の推移を見ます。

改善しないときは次を再確認します。

  • 診断が違う
  • 膿瘍や壊死組織のsource control不足
  • 深部感染、骨髄炎、人工物感染
  • 耐性菌または特殊病原体
  • 浮腫、静脈不全、リンパ浮腫
  • 服薬・通院継続の問題

再発予防

反復する下肢蜂窩織炎では、足趾間白癬、亀裂、湿疹、慢性浮腫、リンパ浮腫、静脈不全、肥満を治療します。頻回再発では、原因対策後に専門医と予防的抗菌薬を検討することがあります。

カルテ記載例

「右下腿に境界不明瞭な発赤・熱感・圧痛。波動なし、超音波で液体貯留なし。痛みの不釣り合い、急速進行、水疱、壊死、皮膚感覚低下、全身毒性を認めず、非化膿性蜂窩織炎を第一に考える。境界を記録し、院内指針に沿い抗菌薬開始。24〜48時間で全身状態、疼痛、範囲を再評価する。」

Take-home message

  • 発赤を見たら、非化膿性・膿瘍・壊死性を分ける
  • 膿瘍は排膿、壊死性は手術が治療の中心
  • LRINEC低値で壊死性筋膜炎を除外しない
  • 典型的軽症蜂窩織炎では広域抗菌薬・血液培養は routine ではない
  • 再発例では白癬、浮腫、皮膚障害を治療する